フリーランスに向いている人はどんな人か(結城浩「ワークスタイル・ライフスタイル」)

フリーランスに向いている人」とは、どんな人でしょうか。

●自分が自分の上司になれる人

「自分が自分の上司になれる人」というのは抽象的な表現ですね。以下のようにパラフレーズしてみましょう。

 ・混沌とした状況を整理して、人に振り分けられる形の「仕事」に分割することができる人。

 ・分割された「仕事」の内容や難易度を見極めることができる人。

 ・メンバーの中でその「仕事」に適している人材として「自分自身」にその仕事を割り当てることができる人。

このような人をイメージしました。

フリーランスであろうがそうでなかろうが、「仕事」は無から自動的に生まれてくるものではありません。必ず誰かが混沌とした状況から「仕事」を切り出してくるものです。

 はい、この「仕事」は、

 この資料をもとにしてこういう文章を書くもの。

 何月何日までに書いてくださいね。

こういうのが「仕事」の指示ですよね。こういわれてきちんと期日までに仕上げるのは「仕事をちゃんとやる」ということです。

でも、よく考えると、このような「仕事」を切り出してくれる人がいたからこそ、このような「仕事」が生まれたことになりますね。

たとえば一つの雑誌を作るという「大きな仕事」があって、それを細かくブレークダウンしていった後の小さな「仕事」が上のような指示になったのかもしれません。

混沌とした状況から「仕事」を切り出せる人、特に、その難易度を見極めてきちんと「自分の仕事」として切り出せる人は、仕事ができる人だなあと結城は思います。

そのような能力はフリーランスでは大きく花開くかもしれませんが、会社勤めであってもそのような見極めの能力は重要でしょう。

●人が見ていても見ていなくてもやるべきことをやる人

「人が見ていても見ていなくてもやるべきことをやる人」というのは、フリーランスでは必須の能力だと思います。基本的にフリーランスでは誰も見ていてくれませんから。

それは言い換えると「何のどういうところを評価するか」という品質評価基準かもしれませんね。会社では「評価者」がいて、仕事を評価する。だからその人が見ていたらできるだけさぼらないようにしよう。見ていなかったらちょっとさぼってもいいかな?

結城が考える「仕事ができる人」は、「評価者」とは関係なく(独立に)、自分の品質評価基準を持っています。たとえば自分たちが作り上げるもの、自分たちがやったこと、それらの品質評価基準を持っているということです。

もちろん成果物を納品する相手の評価は重要です。いわゆる顧客満足度ですね。それはほんとうに重要です。

でもそれとも別に「今回の仕事では、このレベルまで仕上げよう。そのためにはここに力をいれよう。ここに力を入れるために、こっちの方の時間は少々圧縮しよう」というバランスを必死で考えることは大切だと思います。

リソースはいつも足りないのです。

無限のリソース(人手・能力・時間・予算)があるなら、ほとんどの問題は解決するでしょう。でも、現実世界では、リソースはいつも足りません。だからこそ、品質評価基準が必要になります。それは言い換えれば、自分の仕事のうち、コントロールできるところをきちんとコントロールする態度です。

やみくもにがんばるのじゃない。上司が見ているからがんばるのでもない。そのような状況に陥らないように注意して、落ち着いて仕事を(制御できるところは)制御する。そこには、仕事に対する誠実な態度があると結城は思います。

●自分のことを他人のように、他人のことを自分のように考えられる人

「自分のことを他人のように、他人のことを自分のように考えられる人」はフリーランスに向いていると思います。

まず仕事を始める際に、自分が手をつけようとしている作業がどういうものなのか判断することができる。「自分がやるから」ではなく、客観的に見ることができるということです。

また、仕事を進める上で顧客のことを考えられればとても強い。

 「このような製品を顧客はどう考えるだろうか」

 「このような体験に満足してくれるだろうか」

いわゆる顧客視点で考える力は重要です。

複数人で仕事を進める上でも、「自分のことを他人のように、他人のことを自分のように考えられる人」は貴重です。複数人で仕事を行うとき、重要なのはコミュニケーションですから。

 ・仕事を依頼する。

 ・仕事を依頼される。

 ・資料を相手に渡す。

 ・成果物を相手に返す。

それぞれの段階でミス・コミュニケーションが発生する可能性があります。依頼の内容を取り違えたり、資料の肝心な部分に言及しなかったり、成果物のポイントを伝え損ねたり。

もしも、相手の気持ちになって仕事のやりとりができるなら、チームとしてのミスは大きく減ると思います。つまり、それは「ほんとうにこれで相手は期待通りのことをやってくれるか」という想像力を持つことでもあります。

●プロセスより結果を重んじる人

「プロセスより結果を重んじる人」というのも、フリーランスに限らず「仕事のできる人」といえるでしょう。

結城は自分自身を評価するとき、この点がいまいちだと思っています。ついついプロセスの方に目が向いちゃうんですよね。

 「こういうやり方をしたからいいだろう」

 「今回はこういう進め方が重要だ」

まあそれはそれでいいのですが、もう少しビシッと「結果を見る」という側面もあっていいのではないかなあと思っています。

●くよくよ考えすぎない人

「くよくよ考えすぎない人」というのは、仕事ができるできない以前に、現代で心の健康を守るために重要ではないかと思います。結城は二十代のころ、これがすごく苦手でした。

細かいことまでくよくよ考える。悩む悩む。いまにして思えば、まあそれはそれでしょうがないよな、と自分を応援したくなるのですが…。

フリーランスだと、こまごました失敗もたくさんありますので、それをくよくよ考えすぎていたら先に進みません。

 ・「反省」はしても「後悔」はしない。

 ・各時点で最善を尽くしたんだからしょうがあるまい。

 ・これが現在の自分の実力だ。それを認めよう。

 ・人生わずか100年足らずだ。さあ、次のチャレンジに期待しよう!

最近は、こんなふうに切り替えて(自分に言い聞かせて)前に進もうと思っています。

 * * *

以上、あれこれ書いてきましたが、ここに列挙したのは「フリーランスに向いている人」というよりも、フリーか否かに関わらず「仕事ができる人」なのかもしれませんね。

なお、この記事では最も重要な「お金の話」については書きませんでした。それはまたいつか。

結城メルマガVol.048より)