出る杭がいない? 育てればいいんです!(第2回) 【 「出る杭」は火星人? 】

 巷での「出る杭」の解釈は、「奇人」「変人」から始まり、「尖った奴」や「生意気な奴」「我儘な奴」「出しゃばり」「跳ねっ返り」「問題児」「異端児」「野生児 」などと賑やかだ。

果ては、もはや人間ですらない「火星人」と言われることもある。いずれもあまり好意的な解釈とは言いがたい。「出る杭」は、歓迎すべからざる人間であり、故に周囲から叩かれる。

 しかし、見方によって、「出る杭」の解釈は、まったく異なるものになる。

 私の古巣であるソニーは、よく知られるように、採用広告に「出る杭(正確には、出るクイ)を求む!」というキャッチコピーを掲げたことがある。その広告文には、「ウデと意欲に燃えながら、組織のカベに頭を打ちつけている有能な人材が、われわれの戦列に参加してくださることを望みます」と記されている。

 かつてソニーの永遠のライバルとされたパナソニックでは、今でも幾つかのグループ会社がWebサイトで「出る杭が育つ」人事システムをアピールしている。そこには、例えば「個性豊かで自主自立の精神をもち、目標に向かって道を究め、グローバルに活躍できる人材の育成をめざしています」とある。

 また、本気度はともかく、2005年の文部科学省における国際戦略検討会の国際戦略(提言)に「世界大競争時代における日本の国際競争力の強化のためには『出る杭を伸ばす』環境の創出が必要」とあるように、政府も折々、「出る杭」の必要性に言及してきた。記憶に新しいところでは、2014年から、総務省は「破壊的な地球規模の価値創造を生み出すために」独創的なアイデアを持った「変な人」の育成を目指す、通称「変な人プロジェクト」を開始した。担当者いわく、「出る杭を支援したい」。

「出る杭」は、見方によっては、歓迎すべき人間なのである。

横田宏信

1958年 埼玉県川口市生まれ、久喜市育ち。

慶應義塾大学経済学部卒業後、ソニー株式会社に勤務。
「出る杭」歓迎であった成長期のソニーの中でもひときわ「出る杭」ぶりを発揮、英国ソニー赴任期間中には、多国籍有志連合を結成して自らの企画を勝手に推進、世界に先駆けて、ソニーでも初の本格SCM(Supply Chain Management)革新を 成功させた。

ソニー退職直後の起業に失敗するも、その後は、外資系大手のIT会社やコンサルティング会社の要職を歴任。
Big-4と呼ばれる世界4大会計事務所系コンサルティング会社の内、PwCコンサルティング(現IBM)ではシニアディレクター、CGE&Y(現、NTTデータ系のクニエ)では、コンサルタントとしての最高職位であるヴァイスプレジデントに就任。
NHKの特番で取り上げられた成功プロジェクトの実績も持つ。

2004年に独立。
企業やコンサルティング会社、学術機関へのコンサルティング活動に加え、執筆・講演活動も活発化させる。

主要著作は、Amazon Kindleで総合1位を獲得した『ソニーをダメにした「普通」という病』。
近著に、日経ものづくり、日経テクノロジーオンラインでの人気連載をまとめた「出る杭を育てる時代」がある。

2006年から、「出る杭を育てる時代」の演題での講演を実施。
2014年から、哲学的に考え抜かせることで知られる「出る杭研修」を実施。