女王様のご生還 VOL.81 中村うさぎ

今週はメルマガ原稿が大幅に遅れてすみません!

べつに体調不良ってわけでもないんだけど、左手が動かなくなって人差し指でキーボード打ってるから時間かかってしょうがない。

あと、プライベートでバタバタ忙しくてね。

ま、言い訳になりませんけど。



例の病気以降、足が不自由になったことはご存知かと思うが、障害が出ているのは左の足である。

そしてこのたび、左手がおかしくなった。

左ばかりにトラブルが起きるのは、何か理由があるのか?

それとも、ただの偶然か?



医師ははっきりとした答を出してくれないので、自分なりに考えてみた。

私は入院中に一度心肺停止して、脳死直前まで行ったのだが、この時に脳になんらかの損傷があったのではないか?

左ばかりに障害が出るということは、身体の左側を司る脳の部位に何かしらの異常があると考えられないだろうか?



で、この仮説が正しいとしたら、だ。

私は右脳に損傷を受けたことになる。

いい加減な知識で申し訳ないが、確か、身体の左半分は右脳が、右半分は左脳が司っているという話を聞いたことがある。

芸術家に左利きが多いのはそのせいだ、と(←ほんとかよ)。



右脳は非言語的な感覚を司る。

言語野を持つ左脳が「論理脳」だとしたら、右脳は非論理的な直感やインスピレーション、言語化・体系化しにくい美的センスを専門とするらしいのである。

うーむ、これはゆゆしき事態か?

いや、そんなことはない。

何故なら私は昔から、直感やインスピレーションや美的センスに縁遠い人間だからである。

最初から持ってないのだから失いようもない、というわけだ。



私は自分の直感を信じない。

たとえば、「これはいけるかも!」と気合を入れて書いた作品に限って大コケし、たいして期待せずに適当に書いた作品ほど売れたりする、という皮肉な経験を嫌というほどしてきたからだ。



さらに、私には霊感というものが一切なく、したがってスピリチュアルな人たちと話してても、いまいち彼ら彼女らの言ってることがピンと来ない。

その感覚を1ミクロンも共有できないのだ。

霊能者じゃなくても、「何かの気配がする」とか「悪い予感がする」みたいな表現はよく聞くけど、私はそのような気配や予感を感じたことがないように思う。

ごくたまに感じたとしても、たいてい外れるので、そんな予感を抱いたことすら忘れてしまう。



要するに私は左脳人間というやつなのだろう。

それにしてはまったく非論理的な人生を歩んできた気もするが、それだって単なる運や偶然の産物であり、決して直感に導かれて生きてきたわけではない。

では、右脳人間というのは、どんな人々なのだろう?

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