[ビジネス発想源 Select] 第4217回:悪役の悪事

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【第4217回】 悪役の悪事 (2016年5月23日配信)

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昨日、故郷の福岡県北九州市から東京に戻ってきたのですが、北九州空港から羽田空港までスターフライヤーに乗りました。

現在(配信時)、スターフライヤーではかつてテレビで放送されたアニメ『忍者ハットリくん』が3話分をループ放映しています

実は私も1980年代の『藤子不二雄ワイド』放送当時によく見ていて、個人的にはそんなに『ドラえもん』が好きではなかったのに、『忍者ハットリくん』はなぜか大好きでめちゃくちゃハマっていたことを懐かしく思い出しました。

そして、ふとスターフライヤーの機内を見渡すと、意外に『ハットリくん』を観ている人が多くて、なんだこの機内視聴率!と驚いてしまいました。



さて、『忍者ハットリくん』という作品は、多くの人が「『ドラえもん』の忍者版」とイメージしているのではないでしょうか。

ケンイチくんの家に居候する伊賀忍者のハットリくんが、ケンイチの同級生で実は甲賀忍者であるケムマキがケンイチをいじめるのを、伊賀忍法で助けてくれる。

この構図は確かに、のび太の家に居候中のドラえもんがジャイアンやスネ夫からのいじめから未来の道具で助けてくれる、というものとほぼ同じです。

でも、それはイメージ違いです。

それはハットリくんとケムマキが忍者のライバルなのと、ドラえもんとジャイアンがライバル関係ではない部分が違うという部分にもあるのですが、実はケムマキはライバルであるけれど「悪役」ではないのです。



というのは、確かにケンイチをいじめてはいますが、そもそも小学校に通いながら忍術の修行もしていて、都会にネコの影千代だけを連れてかなり貧しい一人住まいをしているのです。

忍術を使えば簡単に盗みを働くことはできるのに、そういう悪事には決して忍術を用いず、忍術で物を奪った影千代を破門にしたぐらいです。

そしてライバルのハットリくんと共闘したり助け合ったりすることもしばしばあって、忍者としてのプライドは気高く持っている人間です。



そして、よくよく考えてみると、悪役ばりに人間のクズなのはケンイチだったりします。

大抵、劇中のドタバタはケムマキのいじめではなく、ケンイチが夢子ちゃんの前でカッコつけたいとか、できないスポーツをやってみたいとか、そういう見栄っ張りなことから始まることがほとんどで、さらに失敗したらハットリくんに責任を押し付けたりして、好き放題やっているのです。

ハットリくんの弟の見習い忍者シンゾウ(シンちゃん)、その飼い犬の獅子丸がケンイチと組み合わさった時はまず最悪の事態を招くというのがお決まりのパターンです。

むしろ、ケムマキのいたずらは、そんなケンイチに制裁を加えているに過ぎない、と思ってもいいかもしれません。

悪役といえば自分の利益のために不正な悪事を働くことが定番なのですが、力を貸してくれる忍者がいることを利用して調子に乗っているケンイチのほうが、よっぽど悪役の素質があると言えるでしょう。



そのように、この作品の基幹となっている忍術を、ライバル役であっても悪事に使わせない、という描き方をした藤子不二雄先生は子どもに伝えるべきことを考え尽くしたのだと思います。

一見ズル賢く見えるケムマキも、得意の忍術を悪用して不正な利益を得るような悪事を働くことはしない。

それを考えると、現実社会というのは、自分の権力や技術を不正に悪用して利益を得ようとする、よっぽど悪役みたいなのがいっぱいいますねえ……。

自社もそんな人間を生み出さないように、自分もそんな人間にならないように、気をつけたいものです。



【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)-------------

・自分たちの立場や得意な技術を利用して、このような悪事を働いてはいけない、このような悪用をしてはいけないという注意項目を、ノートに列挙する。

・社内全員で共有する。



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