事例に学ぶ飲食店の独自化〜何を目指すべきか?
【ロサンゼルス ダウンタウンの美味しいイタリアン〜The Kitchen Factory】
久しぶりのロサンゼルス出張で、これもまた久しぶりのダウンタウンで、ビジネスのランチミーティングに行ったお店は、ダウンタウンの中心から少し離れたところにある、The Kitchen Factory。
なんでも、こちらでは全員がイタリアンの人たちばかりで、メニューも本格的な、日本ではあまりお目にかかれない、ユニークなメニューのイタリア料理ばかり。
そもそもメニューが、とても面白くて、「顧客の気持ちに寄り添っている」ところがいい。
例えば、「まず始めるには」 とか、「その続きに」「みんなで分けるにはこちら」「イタリアンスタイルで始めよう」となっている。
よく、アメリカで見かけるレストランのメニューには、アピタイザー、メイン料理、肉料理、魚料理などと、いかにもどこにでもありそうで、ありきたりの分類が大半である。
この店では、メイン料理も「海からのとか陸からの」となっていて、けしてシーフードとかビーフといった、「機能的」「素材別」といった、属性を表現している「モノ」中心の表現ではない、ちょっとした遊びココロ持った表現で書かれているのだ。
こう書いてあると、ついついあれもこれもと頼んでしまう。なんだか楽しくなってくるのだ。
これこそがものではなくて「コト消費」。この点は、中小規模の企業も、また、飲食店のみならず、例えば、ガソリンステーションのメニューや、美容院などのサロンのメニューにも、十分に使えるアイディアになっている。
中でも、バタフライと呼ばれているパスタが秀逸だった。日本でよくある麺系のパスタではなくて、モチモチとした薄い円で生八つ橋のような生地を使っている、とてもユニークなパスタだった。
味も、バジルクリームと、なかなか日本ではあまりない、ただしとてもおいしく、濃い味なのだけれど、もあっさりしていてたくさん食べられる。そんなような味だった。
そしてデザートはもちろんティラミス。2人で取り分けてちょうどいいボリュームたっぷりの逸品だった。
またこれから何度でも行きたくなる店。やはりおいしいのが何よりもその決め手なのは間違いない。
しかしそれだけでなく、このメニューの書き方や、オーナーのおもてなし、シェフの人柄、そして落ち着ける洗練された店内のインテリアなどなど、全てがカッコよかった。
これらを組み合わせると、この店になる。充分流行る独自性が生まれるのだ。
【福山駅前 酒場 情熱ホルモン〜選ばれる店になるホスピタリティ/おもてなし】
私が、勉強会の講師を依頼されていて、年に数回訪れる、広島県福山市の、駅から歩いて約5分で便利な場所にある、ホルモン焼きのお店。
この時は、夜9時だったが、結構たくさんのお客様で混雑していた。まずは、一番のオススメだという、ホルモン5種盛り。黒ホルモンというのが、珍しかったがなかなか美味しい。
次に好物の「はらみ」。小ぶりの肉で、柔らかいけど以外と油が多い感じ。
どこに行っても必ず頼む「タン塩」は、胡椒の効き具合がレモンにピッタリしてイケる。どの肉も、「炭火」でコンロで焼いて食べるのがいい。
途中、店の人が、コップ一杯の氷をくれたので、その理由を聞いてみたら、「ホルモンの油が炭火に落ちて炎が出た時に消すため」にくれたのだとのこと。
確かに、ホルモンはどれも油が滴り落ちる。それがなんともいい香りなのだけれど、炎が立ってしまい、すぐに焦げてしまう。
この、ちょっとした気配りがいい。
これなら、多額の投資をしなくても、充分に顧客のためになる「おもてなし=心配り」である。そして、まさに私がここに書いたように、口コミもこういうところから広まっていくのだ。
この店から中小企業が見習うべき点は、「お客様が困っているところはないか?」をシンプルに解決している点にある。
では、どうしたら発見できるのか?普段から「お客様の立場になりきって」物事を見るようすると、ふとした時に発見できるものである。
この焼肉屋さんのケースでいえば、「僕がお客さんだったら」と思い、自分で焼いてみる。そうすると、「油が垂れて炎がたち、焦げるな」と気づくのだ。それからできる範囲での解決策を考える。
この2店舗は、特別に多大な設備投資をしているわけでも、多額のテレビコマーシャルをしているわけでもない。いかに顧客のためになるか、を突き詰めて考えた結果の、これらのサービスが、顧客のリピートにつながっている。商売、ビジネスは一にも二にもお客様なのである。
■目次
… 1. 特集 「飲食店の独自化は何を目指すべきか?」
… 2. コラム 「成果を出すためのチーム編成のコツ」
… 3. 時間術「なぜ真面目すぎると結果が出ないのか?」
… 4. 著作・イベントのお知らせ
… 5. 編集後記