BDアニメ New Frontier 第5回『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』

※2010年10月発売号の原稿です。

【惹句】アニメブームを巻き起こし、原点となった伝説の超大作。最新デジタル映像で、ここによみがえる!

 西暦2000年からの10年間はケータイとインターネットで世の中が変わり、アニメもデジタル技術の影響下に置かれることになった。そんな新世紀早々激動となった00年代を締めくくるアニメ映画が、まさか『宇宙戦艦ヤマト』の最新作『復活篇』になろうとは、運命の皮肉と言うほかない。

 内容は1983年の『完結編』の続編となっている。移動性ブラックホールが地球に接近して人類が移住計画を進める中、38歳となった古代進が復活した宇宙戦艦ヤマトの艦長となって、移住を妨害する謎の敵艦隊と戦う。

 第1作目『宇宙戦艦ヤマト』は1974年のTV放送時は不人気だったが、それにメゲずに1977年に劇場版を公開したことで大ヒット作となり、青年層中心のアニメブームを起こした。その基盤の上にアニメの隆盛がある。これを実現した西崎義展プロデューサーがふたたび資金を集め、監督を兼務してまで作りあげた『復活篇』。まさに執念の映画と言えよう。

 だが第1作目を愛する筆者としては、完成前は冷ややかであった。何を今さら感を覚えたし、手描きのヤマトをCG化することにも疑問があった。特に現実を投影した大国のエゴイズムを描くという物語に共感できるのかが、非常に不安だった。その印象は、完成フィルムを観たときに、ガラッと変わってしまう。正直言って諸手を挙げて賛同しづらい点もあるのだが、どんな感想を抱いても「前にヤマトシリーズのどれかで既出だ」ということに気づき、慄然としてしまったのだ。

 あまりにストレートで古風な物語に対し、メカ戦闘は最新CGで描かれ、ビジュアル面では完全に刷新されている。新旧合わさった映像が、新世代の若手クルーの中で存在感を示す古代進艦長の姿に重なっていく。そうするうちに、『ヤマト』は最初からアナクロで陳腐かもしれない設定や物語を、壮大なスケール感と華麗なビジュアルでショーアップしてきた作品だったと、そんな本質が浮かびあがってきた。

 大スペクタクルの連続によって、観客の興奮を喚起するアニメ映画の醍醐味は、やはり良いものである。ヤマト本体の氷塊を破る発進シーンや宇宙戦闘機の三次元的な戦闘、驚くべき敵要塞の正体など、懐かしさを感じるかもしれないシークエンスも、独特のライティングと歪みを加えたCGで描かれることで、新鮮によみがえった。そんな新旧が複合したバランス感がくっきり見えるという点で、Blu-rayにふさわしいコンテンツではないだろうか。

【2010年9月30日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)