BDアニメ 厳選!俺流アニメ 第14回『天元突破グレンラガン』『風立ちぬ』

※2013年7月発売号の原稿です。当時公開の劇場映画レビューつきです。

【商品名】天元突破グレンラガン COMPLETE Blu-ray BOX

【惹句】ドリルで天を突いて閉塞を粉砕! 激烈さと美麗さを再撮影のHD化でパワーアップ!!

●すべてを吹き飛ばす爽快なロボットアニメの新たな姿

 薄暗い地底で暮らし、明るい大空も開放された自由も知らなかった少年の壮大な成長物語である。ドリルの形をした鍵を手にいれ、兄貴分のカミナとともに故郷を出たシモン。多くの苦難とひきかえに、ともに生きる人の大切さや世界の広さを知っていく。

 ベースにドリルや合体などロボットアニメの様式を使い、故・金田伊功のデフォルメの効いた作画を継承しつつ、爽快なカタルシスと細やかな感情表現を両立させている。監督は『Panty & Stocking with Garterbelt』など奔放な作品で知られる今石洋之、シリーズ構成は劇団☆新感線の座付作家座付き・中島かずきと、スタッフも実にパワフルだ。

 初出の2007年は地上波デジタル放送への端境期で、本作もワイド画角16:9のSD制作だった。こうしたケースはアップコンによるBlu-ray化が多いが、本作は全編HDで素材から再撮影を行って飛躍的に画質を向上させている。もちろんコストアップになるが、この作品がそれに値するのは、70年代、80年代を連想させる劇画タッチの荒々しい画風とパワフルなアクション、それを清冽な色味の撮影で昇華させるという、荒々しくも美しくて繊細という絶妙な映像バランスが強化されるからだ。

 商品仕様も本作にふさわしく、実に豪快なもの。大きくごつい箱に、膨大な初公開資料を満載したハードカバー製ムック、そして劇場版2作やDSソフト用OVAなど制作された全映像に新規収録含めた全ドラマCDとお皿だけで15枚が勢ぞろい。このみっしりした感じが作風とマッチしていて、ファン必携の嬉しいアイテムに仕上がった。

●切々たる情感が激動の昭和初期の青春を輝かせる

 今月の必見映画は、宮崎駿監督の最新作『風立ちぬ』(7月20日公開)。太平洋戦争でヒーロー的活躍をした零戦の開発者・堀越二郎という実在の技術者を主人公にして現実的な描写を多くとりいれた点が、ファンタジー中心だった従来の宮崎アニメと異なる。

 関東大震災の惨状や昭和初期の風景を織り交ぜつつ、ラブロマンス面では堀辰雄の小説から題材をとり、空の高みへ昇る一途な目標では航空機の発展に貢献したカプローニとの夢の交流を入れるなど、アニメ映画だけが可能とする自在な表現とアレンジがみどころだ。特に主人公と運命の女性との切迫した状況下の出逢いと交流は、何もかもが不明瞭に感じられる昨今、凛とした気持ちが伝わってきて感動的である。

【2013年6月28日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)