サービス開始1年 ウーバーイーツの躍進に見習うべきはなにか?=理央周

サービス開始1年が経ったウーバーイーツが変えたもの

ウーバーが宅配飲食サービスのウーバーイーツを立ち上げて、約1年になるとのこと。

親会社は、このメルマガでも、何度か取り上げた、シェアリングビジネスの先駆者的な存在の、配車サービスのウーバー・テクノロジー。私も、アメリカで何度も使ったのだが、すぐに来ること、比較的安全に乗れること、価格の安さなど、旧来のタクシーよりもかなり便利であることを実感した。

しかし、日本では法的な規制や、商習慣、業界の慣行など、参入障壁が高いようで、本業の配車サービスの方は、地域限定的な形にとどまっているようだ。

しかし、この出前代行サービスのウーバーイーツの方は、とても興味深い進展をしていると言える。

日経MJによると、

ウーバーイーツの躍進で、同業他社3社と合わせて、「消費者に、内食、中食、外食に加え、出前食という選択肢を提供し、その市場は拡大している」とのこと。出前食の市場的には、対前年比14%の増、4095億円になった。(日経MJ 2017年10月25日より)

何が、出前食の市場を拡大しているのだろうか?まずは、ウーバーイーツが提供している新しさと利便性だ。

そもそも、出前というサービスはもともと存在している。私の自宅にも、毎日のように、寿司屋、ピザ、釜めしなどなど、デリバリーサービスのチラシが入っている。

ウーバーイーツの新しさは、「多くの選択肢から選べる」こと。これまでは、ピザで言えば、ピザハットやピザーラなど、各店舗のチラシやサイトから、どれがいいか、を選んでいたが、ウーバーの場合、店舗のみでなく、寿司やピザといった、カテゴリーも、ワンストップで、横断的に選ぶことができる。ウーバーイーツには、現在1000もの店舗が登録している。

大幅な時短につながるし、何より楽しく選べることになる。

日経MJの記事には、ある企業の事例が掲載されており、「ランチタイムにも、飲食店が並ぶエリアまで歩いて10分。ウーバーイーツなら時間を指定して、待つことなく食べられる」とのこと。

さらに記事には、「働き方改革により定時退社が多くなってきたため、効率的に仕事をする傾向に合わせ、ランチタイムや休憩も効率を良くしたい」という傾向の企業やビジネス・パーソンが増えているとのことだ。

利便性で考えると、アプリにより、電話をかけたりPCに向かったりすることなく、シンプルに注文ができることも、顧客側にとってはベネフィットだろう。

【ウーバーイーツが抱える不確定要素】

需要が喚起され、出前食が浸透して来ると、市場が大きくなる。そうなると、当然ながら競合他社も参入して来る。

出前食の業界では、楽天の「楽びん」など、3社がメジャーな競合になる。

ウーバーイーツの特徴が、配車サービス同様、一般人が配達すること。自由度が多いため、配達時の最低注文金額なども、設定されていないため、頼みやすいという点がある。

一方で、楽天は、ウーバーイーツの注文にかかる配達料がなかったり、楽天ポイントがたまったりという、メリットがある。

このように、ユーザーの方は、良い点悪い点を比較しながらの選択になってくる。競争が激しくなり、差別化のために、工夫が必要になってくる、というフェイズに入ってくるのだ。

【ウーバーイーツに中小企業が何を学ぶべきか?】

では、このウーバーイーツに、我々中小企業は何を学ぶべきか?

まず学びたいのは、「転んでもただでは起きない姿勢」だ。規制により配車サービスの展開が難しい中、自社ビジネスの強みから、事業展開をしたこと、そして、仕組みも業界も地域も集中させたことが、特記すべきことであろう。

成功体験があると、そこにとらわれ、自由な発想ができなかったり、すぐに諦めたりしてしまうが、自社の強みを、少しずらすことで、新しい市場が開拓できる、ということを、私たちは肝に命じたいところだ。

もう1点は、自社サービスによって、顧客が感じる「価値」を提供している点だ。

出前サービスは、美味しさや種類の豊富さに加えて、依頼する側が抱える、問題点、例えば、時間通りに欲しい、自宅や会社を出ていけないので、依頼する、といった課題を解決しなければならない。

そこに、選ぶ楽しさ、そして、ワンストップで、カテゴリーを横断できる便利さが加わっている。

顧客が欲しいのは、「食べ物」だけではなく、これらすべてが欲しいのだ。

働き方改革や、スマホの浸透がこれに拍車をかけている。その意味でも、ウーバーイーツの今後が楽しみなのだ。

■目次

… 1. 特集 「サービス開始1年が経ったウーバーイーツが変えたもの」

… 2. コラム 「名古屋メシのリミックス度」

… 3. 時間術「質の高い仕事ができる場所を探す」

… 4. 著作・イベントのお知らせ

… 5. 編集後記

2.コラム: 名古屋メシのリミックス度

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