BDアニメ 厳選!俺流アニメ 第12回『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』『言の葉の庭』

※2013年5月発売号の原稿です。当時公開の劇場映画レビューつきです。

【惹句】戦闘に次ぐ戦闘が絶体絶命のドラマを盛りあげる! 歴史的な大ヒット作がついにBD化!

●たたみかけるような宇宙アクションを堪能!

 『宇宙戦艦ヤマト』が中高生以上のアニメファン層を開拓したのは歴史的事実。その人気を拡大し、大衆娯楽として世に認知させたのは1978年公開の続編『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』であった。80年代末まではアニメ映画では史上1位の地位に君臨していた記録的な超ヒット映画だ。

 2時間31分の長尺に戦闘アクションを詰めこめるだけ詰めこんだ圧巻の密度感は、ヤマト人気絶頂期の追い風が可能としたものだ。新たな敵・白色彗星帝国が次から次へと繰りだす新型メカ。拡散波動砲を装備した新鋭地球艦隊を一瞬で撃滅してしまうほどの強敵に追いつめられたヤマトの反撃。

 地球の命運を賭けた死闘の中で描かれる古代進と森雪の悲恋やクルーの哀しい運命は、まさにエンターテインメントとしてのアニメ映画の王道であった。

 今回のブルーレイ化では新たにHDテレシネを行った結果、今まで見たこともないような最高の画質が得られた。セル画と背景の質感や色味が忠実で、さらに本作から大量に導入されるようになった透過光などの撮影表現が実に美麗に再現されて作品への没入度を高めている。

 戦闘機パイロットの腕が操縦席外に飛び出す作画ミスなどが修正されたのはご愛敬だが、フィルム傷などの修復もかなり入念である。さらに特典として柏原満氏による効果音ストーリー「音響譚詩YAMATO」や安彦良和氏の絵コンテ(初公開)も盤内に収録されているので、お買い得であろう。

 今の目でみると突っ込みどころも多い作品だが、比類なき盛り上げの興奮を、ぜひ高品質で体感してほしい。

●淡い光と水の透明感が かきたてる悲恋の想い

 今月の必見は、5月31日から公開の映画『言の葉の庭』。2002年に30分のアニメ『ほしのこえ』をひとりで制作して時の人となった新海誠監督の最新作である。透明感あふれる「光」の表現に満ちたPVは公開直後から話題騒然。万葉集の一篇に材をとり、日本庭園、雨をテーマにビビッドな明暗の階調やデリケートな空気感、色合いを通じて「孤悲(恋の万葉表記)」を描くという。46分と中編ではあるが、現実を独特の感性で見つめる映像美が凝縮して濃厚な時間が楽しめるはず。あまねく存在する「光」の微妙な差違のとらえ方から、人の想いと世界が浮かびあがる、そんな新海誠作品ならではの豊かな映像体験を楽しんでほしい。

【2013年4月26日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)