女王様のご生還 VOL.41 中村うさぎ

昨日、ついに自費出版本第一弾「エッチな絵仕事、なぜいけないの?~売春の是非を考える本」の発送作業が完了した。

支援者の方々、お待たせしてすみませんでした。もうすぐお手元に届くと思います。



それにしても、生まれて初めての自費出版、いろいろと戸惑ったり失敗したりの連続で、「本を作るってこんなに大変だったのね」と、しみじみ実感した。

今までは依頼された原稿を書いて出版社にメールで送れば自動的に本になって店頭に並んでいたから、企画や構成から入稿まで自分でやったことなど一度もなかったし、対談をセッティングして録音してテープ起こしをお願いして、それを基に対談原稿を書くという一連の作業も、自分でやった経験がない。ぜーんぶ出版社の方がやってくれていたのだ。ありがたいことである。まあ、それが彼らの仕事なんだが。

それを思うと、何から何まで自分でやる同人誌の人たちは偉いなぁと感心してしまう。私の場合は他人様から資金を募ってしまったので出さないと詐欺になってしまうが、彼ら彼女らは自腹で作るわけだから、本を出すも出さないもすべて自分の意志の強さにかかっている。途中で投げ出したくなることもしょっちゅうだろう。ていうか、私なら100%投げ出す。そして逃げる(笑)。



そういえば私は子どもの頃から母親に「意志が弱い」とよく叱られていた。今にして思えば、意志らしい意志も持たずに他人まかせの人生を歩んでいた母親にそんなことを言われるなんて心外だが、彼女の場合は「与えられた義務をきちんと果たす」という意志は私より強く、黙々と家事や雑事をこなしていたわけだから、勉強や宿題をすぐ中途半端で投げ出してしまう私は「意志が弱い人間」に見えたのだろう。

確かに、そういう意味では私はめちゃくちゃ意志の弱い人間だ。基本が怠惰だからこつこつと地道な努力ができないし、誘惑に弱いから目先の楽しさを追いかけて義務をおろそかにしてしまう。

だけど私は「自分の人生を自分で切り拓く」という意味においては、母親よりもずっと意志の強い人間だと自分では思っていた。だって彼女は何事も自分で決定しないし、責任も取らないもん。人や世間に決められたことをやっているだけじゃん。それって「意志の強さ」と関係あるの?

どうやら母親と私では、「意志」の定義が違うらしい。私は人生を決めるにあたって、世間に歯向かってまでも「こうしたい」という自分の意志を貫いたが、その一方で他人から課せられた義務に関しては無責任に放棄することもたびたびあった(締め切りを破るとか税金滞納するとかね)。しかし母親は、その真逆である。他人や世間に逆らって自分の意志を貫いたことなど一度もないが、他人や世間から課せられた義務には忠実に従い、これを果たす。こういう場合、どっちが「意志が強い」のだろう? おそらく母親から見たら、私は意志が強いのではなく、単にワガママなだけだろう。「自分のやりたいことを押し通すなんて、意志の強さとは言えない。そんなのただの身勝手でしょ」と考えそうだ。まぁ、確かに一理ある。

この続きを見るには

(1,189文字)

¥200(税込)

購入して続きを読む