女王様のご生還 VOL.189 中村うさぎ

前回、「人生のやり直しなんかいらない」と書いた私だが、そんな風に思ってる人間はマイノリティで、この世には人生のやり直しを望んでいる人の方が多いのだろうと推測する。

そうでなければ、ラノベや漫画であんなに「転生物」が人気を得るはずがない。



「転生物」のお約束は、ダメダメ人生を送ってきたヒキニートのオタク主人公がめっちゃアホな事故かなんかでダメダメな死を迎え、異世界に転生する。

つまり、人生やり直しのチャンスを与えられるわけだ。

んで、転生先ではチート並みにステータス高かったり運がよかったりして「今までの俺じゃない恵まれた俺」に生まれ変わるわけだが、基本的な人格はそのままなので適度にゲスだったりスケベだったりする。

この「適度にゲスだったりスケベだったりする基本的人格」ってのがミソで、これがいきなり聖人や正義の味方に変わったりすると読者や観客の共感を得られない。

要するにこの「適度にゲスでスケベな俺」が「真の俺」なのであって、ここは変えずにステータスや環境だけ変われば夢のような人生が送れるかも、という幻想の元に成り立った物語である。



これでだいたいわかるように、多くの人々は「ゲス(あくまで「適度」に、だが)な俺」に対してはほぼ肯定的であり、そんな自分が思いどおりの人生を歩めないのは運やステータスや環境に恵まれないからだ、と考えているようだ。

これにはまぁ、私も基本的に賛成である。

前回も言ったように、私は基本的に自分の人生を「運だけで乗り切った」と考えている。

運以外のステータスは最低とは言わずとも極めて凡庸だ。

多少は文章力があったかもしれないが、プロの世界では私などより遥かに才能に恵まれた人々が星の数ほどいる。

ところが、不公平なことに、私より才能があっても評価されない人たちは大勢いて、その人たちは単に「運」がないのだ。



だが、ここでもうひとつ、疑問が湧く。

私の件はともかく、人は本当に運やステータスだけで人生は一変するのだろうか?

確かに生まれつきのステータスや運が人生に与える影響は大きい。

美貌や才能に恵まれた者、生まれてきた家庭環境、そのうえに運の良さが加われば最強という気もする。

しかし、それだけではないような気もするのだ。



先日、昔ながらの友人たちに久しぶりに会って食事をしたのだが、40代後半から63歳(←私だけw)からなるそのメンツは、それぞれに思いどおりの人生を生きてそれなりに世間的な成功を収めた人たちであった。

で、彼ら彼女らが口を揃えて言ったのが「自分が成功したのは才能や努力というよりも運だったと思う」という結論であった。

まぁ、じつのところ、私以外のメンツは必ずしも「運」だけでなく、私の目にもそれぞれ才能のある人々だったので、「巡ってきたチャンスをどう掴むかとか、逆に試練や逆境をどう乗り越えるか」というところに本人の才能や努力が発揮されて成功したのだとは思うが、それでも彼ら彼女らは「運がよかったんだよ」と謙遜ではなく本気で言っていた。

この続きを見るには

(1,445文字)

¥250(税込)

購入して続きを読む