『鋼鉄神ジーグ』BD BOX解説

《INTRODUCTION》

かつて人類は、邪魔大王国との壮絶な戦いを行っていた。

凶悪な呪術力を持つ女王・妃魅禍(ヒミカ)が率いるハニワ幻神。

対するは、司馬遷次郎博士率いるビルドベースと鋼鉄ジーグ。

その最終決戦で、ジーグは妃魅禍を封じ込めることに成功する。

だがその時、二つの強大なエネルギーの衝突により謎のゾーンが発生。

九州のほぼ全土がゾーンに飲み込まれてしまった。

あれから50年。その記憶を呼び覚ますものが復活しようとしていた……。

《作品解説》

 ロボットアニメ『鋼鉄神ジーグ』は全13話のTVシリーズ。2007年4月5日から7月12日までWOWOWスクランブル枠にて放送された。永井豪とダイナミックプロ原作の『鋼鉄ジーグ』('75)の続編にあたる作品で、ロボットアニメのある種の「王道」を感動的に見せつけた作品として大きな話題を呼んだ。

 作品世界は前作の50年後と設定されている。前作の主人公・司馬宙(ひろし)は邪魔大王国との決戦中に行方不明となり、代わってバカでスケベだが運動神経は鋭く一途な男子高校生・草薙剣児というダイナミックプロ作品ならでは熱血キャラが物語をリード。健康なお色気を見せるヒロイン・珠城つばきとのコンビネーションの中で、新ジーグの操縦者として成長していく。

 こうした主役変更を含めた変更点を筆頭に、数々の「こう来たか!」というアレンジが加えられている。これは21世紀の現在の観客に対して新旧のバランスを取りながら、新たなロボットアニメ像を提示しようとした意欲作なのである。

 監督は『サイボーグ009』('03)、『新ゲッターロボ』('04)など原作漫画へのリスペクトあふれるリメイク作品の数々を手がけてきた川越淳。キャラクターデザインの菊池晃により、永井豪ファン大満足の野性味あふれるアニメキャラが誕生した。初代の登場人物の一部は50年の加齢によって老人キャラとなって登場する一方で、敵側のヒミカをはじめ、半世紀の時を越えて変わらない人物たちも大勢いる。こうして半世紀という時間の断層によって年齢的にも引き裂かれたキャラたちは大きな葛藤を抱えながら、うねりのようなドラマを紡ぎ、観客を感動の高みへと導いていく。これも大胆なオリジナル展開がもたらしたものである。

 こうしたSF作品だけが可能とするドラマ構造に加え、短いシリーズの中に詰め込めるだけ詰め込んだ設定情報の量、あっと驚くストーリー展開の質、そして豪快なロボットアクションと、本作に語るべきポイントは多い。新旧ジーグパーツが換装可能なロボットと怪獣が死闘を繰りひろげるスーパーロボット的世界、悠久の時を越えた愛を描く日本神話的世界、そして茫漠たる宇宙空間を超越するSF的な世界と、普通なら同居しそうにないものが合わさってスケール感あふれる「ロマン」を紡いでいく。

 注目すべき本作の魅力は、このような各要素がバラバラにさせず、ひとつのものとして研ぎ澄まされまとまっていくときのバランス感覚の妙味だ。そしてクライマックスには「新旧ジーグの共演」という、まさに誰もが永らく夢に見た感動的なファイト、その至高のカタルシスが訪れる……。

 壮大なタイムスケール、あるいは宇宙の遠大な空間を感じさせる世界観を採用したことや、数々のオマージュ的キャラを配置したことを含め、永井豪作品の一種の「集大成」とも見ることができるパワフルな作品、それが『鋼鉄神ジーグ』である。

 本作の画像は元来HD(ハイ・デフィニション)で制作されていたが、ごく一部のファンにしかその解像度で鑑賞いただけなかった。今回、Blu-rayメディアによって音声ともども「真の姿」が出現する。

 では、50年を超える「ジーグの旅」を心行くまで味わっていただきたい。

【2009年1月29日脱稿】初出:「鋼鉄神ジーグ BD BOX」(ポニーキャニオン)