出る杭がいない? 育てればいいんです!(第5回) 【 「出る杭」はイノベーター 】

 ところで、気付いている者は少ないが、「常識」というものには「部分最適」に基づくものが多い。このことは、「我が社の常識」、「業界の常識」、「日本の常識」のように、「常識」には、例外なくと言ってもいいほど「○○の」という「範囲(集団)を限定」する言葉が付くことからもうかがえる。「○○の」が付かない、ただの「常識」は、まずない。

 そして、「全体最適」を重んじるということは、裏を返せば「部分最適」を軽んじるということだ。だから、「全体最適」を重んじる「T字型人間」は、常識を疑い、故にしばしば常識破りの変化、すなわち、イノベーション(Innovation:革新)を起こすことになる。

 対して、「部分最適」を重んじる「I字型人間」は、常識を疑わず、故に常識破りの変化を起こさない。国民ではなく省庁のために働く中央官僚のような、いわゆる「優等生」がそうであるように、である。

 つまり、「出る杭」はイノベーター(Innovator:革新者)でもあるということだ。このことに、世の中はもっともっと注目すべきだと思う。そういう意味では、既述の総務省「変な人プロジェクト」が「異能(Inno)vation」プログラムという呼称の活動を行っているのは、評価できる。どうやら中央官僚も「優等生」だけではないらしい。

 なお、「イノベーション」という言葉は、極めて曖昧なものだ。そのため、世間は「改善」レベルの現象も「イノベーション」とみなしがちであり、その分、「改善」レベルを超えた「イノベーション」を起こせなくなっている。

 そこで、私は「イノベーション」を「常識破りの変化」と定義するようになった。これでも曖昧さは排除し切れていないが、「常識破りの変化」なら、少なくとも「改善」と混同されることはないだろう。

 また、「常識破りの変化」とは、皆が持っていない考えがもたらすものである。だから、皆が持っていないアイデアが「常識破りの変化」をもたらすことはよく知られるが、アイデアだけが「常識破りの変化」をもたらすわけではない。皆が持っていない概念と、それを生む考え、それから生まれる考えも「常識破りの変化」をもたらすことを指摘しておく。

横田宏信

1958年 埼玉県川口市生まれ、久喜市育ち。

慶應義塾大学経済学部卒業後、ソニー株式会社に勤務。
「出る杭」歓迎であった成長期のソニーの中でもひときわ「出る杭」ぶりを発揮、英国ソニー赴任期間中には、多国籍有志連合を結成して自らの企画を勝手に推進、世界に先駆けて、ソニーでも初の本格SCM(Supply Chain Management)革新を 成功させた。

ソニー退職直後の起業に失敗するも、その後は、外資系大手のIT会社やコンサルティング会社の要職を歴任。
Big-4と呼ばれる世界4大会計事務所系コンサルティング会社の内、PwCコンサルティング(現IBM)ではシニアディレクター、CGE&Y(現、NTTデータ系のクニエ)では、コンサルタントとしての最高職位であるヴァイスプレジデントに就任。
NHKの特番で取り上げられた成功プロジェクトの実績も持つ。

2004年に独立。
企業やコンサルティング会社、学術機関へのコンサルティング活動に加え、執筆・講演活動も活発化させる。

主要著作は、Amazon Kindleで総合1位を獲得した『ソニーをダメにした「普通」という病』。
近著に、日経ものづくり、日経テクノロジーオンラインでの人気連載をまとめた「出る杭を育てる時代」がある。

2006年から、「出る杭を育てる時代」の演題での講演を実施。
2014年から、哲学的に考え抜かせることで知られる「出る杭研修」を実施。