出る杭がいない? 育てればいいんです!(第3回) 【 全体最適を重んじる「出る杭」 】

 では、歓迎すべき「出る杭」とは、どのような人間なのか。

 古今東西、「出る杭」は、世の中の少数派であり、世の中の多数派は、「部分最適を重んじる人間」である。そこで、「出る杭」とは、それとは真逆の「全体最適を重んじる人間」であるとの仮説を置いてみる。

 すると、通常、真逆の考え方をする他人は、歓迎すべからざる人間であるから、世の中の多数派にとって、「出る杭」は、歓迎すべからざる人間であることになる。

 そして、「全体最適」とは、「集団全体にとって最良の状態」であり、ビジネスにおいては、企業が生む顧客価値が最大化されている状態である。

なぜなら、企業が生む顧客価値が最大化されている状態とは、企業が顧客から得る対価も最大化されている状態であり、対価の分配が公正であることを前提とすれば、これこそがビジネス・コミュニティー全体、すなわち顧客、企業、従業員、投資家、サプライヤーなどのビジネスに関わるステークホルダー(利害関係者)全てにとって最良の状態であるからだ。

 だから、「全体最適を重んじる人間」は、ビジネスにおいては、企業が生む顧客価値の最大化を狙うことになるが、世の中の多数派である「部分最適を重んじる人間」は、そうならない。「部分最適を重んじる人間」は、自分や自分の組織にとっての価値の最大化を狙うから、しばしば「全体最適を重んじる人間」にとって、組織の壁となる。

よって、「全体最適を重んじる人間」は、「部分最適を重んじる人間」たちの中で、「ウデと意欲に燃えながら、組織のカベに頭を打ちつけている有能な人材」となる。その組織のカベを乗り越えられれば、「個性豊かで自主自立の精神をもち、目標に向かって道を究め、グローバルに活躍できる人材」ともなる。うまく行けば、「世界大競争時代における日本の国際競争力を強化する人材」ともなるだろう。「破壊的な地球規模の価値創造を生み出す人材」にだってなるかもしれない。

 つまり、「出る杭」が「全体最適を重んじる人間」であるならば、「出る杭」は、かつてのソニー、今のパナソニック、折々の政府にとって、歓迎すべき人間であることになる。それに、「全体最適を重んじる人間」は、「部分最適を重んじる人間」にとっては「奇人」「変人」(中略)「火星人」であってもおかしくない。また、歓迎すべき「出る杭」を「全体最適を重んじる人間」とする仮説以上の仮説は、見当たらない。

 ならば、歓迎すべき「出る杭」とは「全体最適を重んじる人間」と言ってよさそうである。 従って本書では、「出る杭」とは歓迎すべき「出る杭」、すなわち「全体最適を重んじる人間」であると定義することにする。

横田宏信

1958年 埼玉県川口市生まれ、久喜市育ち。

慶應義塾大学経済学部卒業後、ソニー株式会社に勤務。
「出る杭」歓迎であった成長期のソニーの中でもひときわ「出る杭」ぶりを発揮、英国ソニー赴任期間中には、多国籍有志連合を結成して自らの企画を勝手に推進、世界に先駆けて、ソニーでも初の本格SCM(Supply Chain Management)革新を 成功させた。

ソニー退職直後の起業に失敗するも、その後は、外資系大手のIT会社やコンサルティング会社の要職を歴任。
Big-4と呼ばれる世界4大会計事務所系コンサルティング会社の内、PwCコンサルティング(現IBM)ではシニアディレクター、CGE&Y(現、NTTデータ系のクニエ)では、コンサルタントとしての最高職位であるヴァイスプレジデントに就任。
NHKの特番で取り上げられた成功プロジェクトの実績も持つ。

2004年に独立。
企業やコンサルティング会社、学術機関へのコンサルティング活動に加え、執筆・講演活動も活発化させる。

主要著作は、Amazon Kindleで総合1位を獲得した『ソニーをダメにした「普通」という病』。
近著に、日経ものづくり、日経テクノロジーオンラインでの人気連載をまとめた「出る杭を育てる時代」がある。

2006年から、「出る杭を育てる時代」の演題での講演を実施。
2014年から、哲学的に考え抜かせることで知られる「出る杭研修」を実施。