BDアニメ New Frontier 第6回『劇場版マクロスF~イツワリノウタヒメ~』

※2010年11月発売号の原稿です。

【惹句】TVから劇場、そしてBlu-rayへと、進化し続ける高精細映像。未知への挑戦に充ちた新形態パッケージ!

 1982年から続くマクロスシリーズの三大要素とは、「歌と三角関係と可変戦闘機」だ。アニメの王道と言える「メカと美少女」を確立させ、25年以上に及ぶ長期人気を得た作品である。その最新作『マクロスF(フロンティア)』では過去作の特徴をふんだんに取りこんだ上でさらなる進化を目指した結果、新しいファンを獲得することに成功した。2008年のTVシリーズは歌姫2人のライブシーン、宇宙怪獣と可変戦闘機のCGによる高密度の映像がBlu-ray時代の本格的幕開けのタイミングにフィットし、大ヒットとなった。

 人気を受けての劇場版は前後編の2部作だ。前編にあたる『虚空歌姫 イツワリノウタヒメ』はTVシリーズ前半をベースに基本設定の変更を行い、ビジュアルの随所に劇場に対応する意気込みを強く感じさせるフィルムに仕上がった。ライブシーンには大量の新作を加えて華麗にショーアップ、超高速で展開するバトルもCGの解像度を上げて再レンダリングし、コクピットなどにも特殊効果をを加えて金属の質感を増すなど、全カットが高精細・高密度化している。

 淡い恋愛関係に歌と戦闘が絡みあいながら、ひとつのクライマックスを迎えていく高揚感も、一本の流れに乗せて感情のうねりを作る劇場版ならではのもの。これに色彩、照明効果とサラウンド音響との相乗効果が加わり、映画的興奮を極限まで盛りあげる。その「光と音に包まれる快感」は、情報量を損なわないBlu-rayソフトによって、家庭でも存分に楽しめる。劇場公開時からさらに手が加わえられた映像は、視聴環境さえ整えれば微細な情報の差異が見えてきて、パワーアップの凄みがくっきりと実感できるはずだ。

 さらに今回の「ハイブリッドパック」には映像とゲームが1枚のディスクに同梱というユニークな仕掛けがほどこされている。普通のBlu-rayプレイヤーでも再生可能だが、PS3にかけるとオマケ的なゲームも楽しめるのである。セーブ不可だが、可変戦闘機を360度ぐるりと回したりできるので、世界がぐっと拡がった感じがする。60ページ解説書(氷川竜介編集)も劇場用新設定に加えて、公開時のキャンペーンを網羅するなど、作品の切り口を増やして楽しむ姿勢が貫かれている。

 「フロンティア」という題名のとおり、新しい地平を目指して開拓を続ける作品にふさわしい仕様ではないか。2011年2月26日公開予定の完結編「恋離飛翼 サヨナラノツバサ」にはどんな驚きが待つのか。今から楽しみだ。

※2016年からバンダイビジュアルより単品パッケージが発売されています。

【2010年10月30日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)