出る杭がいない? 育てればいいんです!(第37回) 【 分社化で競争力は高まらない 】

 さて、次は「各事業ユニットの自立」である。

 中期経営方針発表の場で、社長の平井一夫氏は、既に分社化したテレビやモバイル、ゲームなどに加えて、ウォークマンを手掛けるビデオ&サウンド事業など、エレクトロニクスの各事業ユニットを分社化する予定であると語っていた。

 実際、2015年10月にはビデオ&サウンド事業を分社化し、2016年4月に半導体事業の完全子会社を設立した。狙いは、「事業ユニットの経営の自立を高めて、競争力を高めること、結果責任を明確化すること」にあるとのよし。分社化の狙いの定番だ。

 しかし、分社化するということは、分社化された事業ユニットに対して、本社が投資家となることである。ならば、投資家視点を重視した経営をすると言っている以上、ソニーは分社化された事業ユニット、すなわち子会社に対して、本社である親会社の視点を重視した経営を求めることになる。結果、事業ユニットの経営の自立は高まるどころか下がりかねない。

 本質的に、経営の自立とは、ある個人や集団から離れることではなく、顧客視点重視を阻害する要因から離れることである。なのに、投資家視点重視である親会社の視点を重視することは、その阻害要因の最たるものになりかねない、ということだ。

 加えて、分社化には事業ユニット間の連携低下という副作用がある。これは、ユニット間に重複する組織や業務の肥大化によるコスト増、技術的な相乗効果の希薄化による商品力の低下など、競争力を下げる要因を生みやすい。

 ただし、分社化すれば、事業ユニットは本社とは明確に別の事業体と言えるようになるわけだから、たとえ事業ユニットの経営の自立は高まらなくても、少なくとも各事業ユニットの経営者の結果責任を明確化することにはなる。

 本社の視点を重視した経営を求めることで、事業ユニットの経営の自立が高まるどころか下がりかねないのに、その結果責任だけは明確化する。そのことが、一体どれだけ顧客のためになるというのだろう。ソニーは、そこを明らかにしなければならない。