投資信託を買う人は情報弱者?~午堂登紀雄の「フリーキャピタリスト入門」

投資信託に手を出すのは情報弱者か

私は4年くらい前に、毎月分配型投資信託に400万円ほど投資したことがあり、その選別方法もこのメルマガでご紹介したことがあります。

しかし結局、1年半ほどですべて解約してしまったのですが、その理由は2つあります。

1つは、FXでトルコリラが暴落したため補填のための資金が必要となったこと(苦笑)。

2つ目は、ある種の気持ち悪さがどうしても気になったからです。

資産運用をしようとするとき、投資信託を買おうとする人は少なくないと思います。

確かに、少額の資金から始められるとか、積み立てもできるなど、ハードルが低く手軽な方法ではあります。

また、個別銘柄の情報が入手しにくい新興国市場、日本人が買うには手間暇がかかるよ

うな未整備な環境の市場にもアクセスできるというメリットもある。

しかし一般的に、投資信託は何をやっていいかわからない人、何をやっているのかわからない人、考えるのが面倒くさいという人が買う商品だと感じています。

それはなぜか。

私は事業家なので、やはり自分の判断と行動に「理由」や「根拠」を持ちたい。

しかし投信を買うときは、「なんとなく上がりそうだから」「世間が注目しているから」となりやすい。

というのも、投信を構成する個別銘柄の「本来の価値」「価値と現在価格の乖離」「その乖離が将来修正される見込み」をあまり考えずに買ってしまうからです。

しかしそれは博打か宝くじと同じで、そんなあやふやな理由でお金を出すことが気持ち悪いのです。

だから私は、不動産や太陽光発電所など、個別案件に戻りました。

実際、株で億万長者になっている人は、投信ではなく個別銘柄で儲けています。

彼らは株価よりもむしろその企業が持つ価値に着目します。

そして、「この企業の本来の価値と、現在の株価には乖離がある。そしてこの乖離は、将来修正される見込みがある。つまり将来は株価の上昇が見込めるはず」という根拠を得る。

そういう自信を持てるならば、あえて資金を分散させる必要はないでしょう。

不透明なものに分散させるより、「上がる」であろう銘柄に資金を集中させたほうが儲かるからです。

もちろんその予測が外れることも多々あるものの、彼らはすぱっと損切りし、その理由を分析し、次の予測につなげようとします。

それはたとえば、仕事で言うところの仮説検証というサイクルと同じです。

では億万長者は資産を分散させないのかというとそうではなく、彼らの分散投資とは、そういう個別銘柄の組み合わせなのです。

株にしろ債券にしろ金(ゴールド)や不動産にしろ、「これは儲かりそう」という個別銘柄を複数探し、その総体で分散しているということ。

では投信を買う人で、そこまで突っ込んで分析する人はどれだけいるか。

もちろん詳細に調べる人もいるとは思いますが、どの商品の手数料が安いかなどがメインで、投信を構成するひとつひとつの銘柄の価値には興味がないことがほとんど。

特にインデックス教の信者によく見られる傾向です。

彼らは価値ではなく価格しか見ていないから、投信の価格が上がれば喜び、下がれば悲観するなど、価格変動に翻弄されます。

価格にしか興味がないから、成長が見込まれる合理的な根拠よりも、イメージ先行で選ぶことになりやすい。

たとえば「インドは人口が多いから伸びそう」「ブラジルはオリンピックがあるから有望」「でも分散しておいたほうが安心」などといった、漠然とした印象や思い込みで選択する傾向があります。

彼らは、自分では良い企業を見抜けない、あるいは見抜く目を持っていないということ。つまり、良い企業とそうでない企業を判別する指標を持っておらず、そうしたことを考えるのが面倒で、誰かに任せたいという依存心があるわけです。

そういう姿勢は人生の全方位に影響を与える可能性があります。

たとえば伸びそうな人材とそうでない人を見分ける、取引すべき相手とそうでない相手を見分ける、自分のスキルの将来性があるかないかを見分ける、商品やサービスの成長性を見分ける、など。

もちろん、多忙でそんなことをする時間などないし、エネルギーもかけられないという人もいると思います。

確かに億万長者でも本業が忙しいという人も少なくありませんが、そういう人はそもそも投信も個別銘柄も買わず、別のものに資金を振り向けるだけです。

たとえば株ではなく不動産オンリーで攻める、という感じ。

「お金持ちは自分がよく知らないものには手を出さない」、という言葉を耳にしたことのある人も少なくないように。

また、投信は「自分はこれが有望だと考える」と判断した銘柄を、自分で組み合わせることはできません。

実はCFDという商品を使えば可能ですが、取り扱いのある証券会社は多くなく、私が口座を持っていた3社ともに撤退しました。

撤退しなくても、取り扱い銘柄を減らした会社はたくさんあります。

このときもしポジションを持っていたら強制的に決済されてしまうため、私も今はCFD取引はしていないのです。

もっとも、「様々な投信の組み合わせでポートフォリオを組めるだろう」と考えることもできますが、それはファンド・オブ・ファンズ(複数のファンドを組み合わせたらファンド)のようなもので、トータルでは膨大な手数料を取られることになります。

すると、仮に上昇しても手数料でトントンになることもあるし、もし下落したら損失と手数料のダブルパンチということになります。

実際、私も利益確定できたと思ったら、トータルでは若干のマイナスでした。

損益計算上はプラスだったのに、犯人は手数料。「なんだよ~」とガッカリ。

証券会社のポジション明細も、それがわかりにくい表記になっていて、悪意を感じました。

それに、なぜ銀行や郵便局やファイナンシャルプランナーが投資信託を売ったら販売手数料をもらえて、それがビジネスとして成り立っているのか。

やっぱ売る側が儲かるからですね。

もちろん、投信を買う人が全員そうだというわけではないし、すべての投信が儲からないというわけではなく、少なくとも投資信託ビジネスのカモにならないよう、注意が必要ということです。

そんな理由もあり、私は現時点では投信に手を出す予定はありません。

ただし例外。米国のSP500のインデックスファンドを確定拠出年金の中で少しだけ、というのはやってもいいかなと思っています。

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