BDアニメ 厳選!俺流アニメ 第10回『オーバーマン キングゲイナー』『ドラゴンボールZ 神と神』

※2013年3月発売号の原稿です。当時公開の劇場映画レビューつきです。

【惹句】活気あふれるキャラたちが縦横無尽に駆けめぐる。富野アニメの新境地が本来の高画質で!

●予測不可能の楽しさがギッシリのお祭り作品

 2002年に富野由悠季監督がつくった本作『オーバーマン キングゲイナー』は、観ると元気になれる痛快無比のアニメだ。人類が環境回復を目的に永久凍土など過酷な地域にドームポリスを建設して暮らす時代。閉塞を嫌った大衆は“エクソダス”という集団脱走を試みる。それを阻止するシベリア鉄道など体制側との戦いがはてしなく続いていく。

 題名の「オーバーマン」とは超能力をもつ人型マシン。「姿を消す」「時間を止める」「超高速で移動する」など破天荒な戦いも大きなみどころだ。スタジオジブリやカプコンから集まったイキのいい精鋭クリエイターの個性がいい感じでブレンドされ、予想もつかない物語がユーモラスかつ小気味よく展開していく。

 最初期のWOWOW向けハイビジョンアニメとして制作された作品で、今回のブルーレイ化では制作時のHD画質が商品としては初めて楽しめる。24P化など調整された映像は、透明感あふれる美しさ。さらに2007年の5.1ch化された音声もマスターオーディオで収録されて、TVアニメの域を超えた高クオリティで楽しめるようになった。

 ゲインとゲイナー、エクソダス仕掛け人とゲームチャンプという対照的な若者2人を中心に、登場人物全員で「お祭り」に参加しているような楽しさがある。下世話で猥雑で破天荒で思わず笑ってしまうセリフやシーンも満載。一方でテーマは非常にシリアスでもある。

 いかにして既成概念からエクソダスして新たな地平を目指すかという観点は、いまの時代にもっとも必要とされるものだ。富野アニメならではの奥深さを、ぜひ味わってほしい。

●世界的ヒット作が完全新作で劇場映画に!

 1984年に「週刊少年ジャンプ」で連載スタート以来、マンガ、アニメともに全世界最大級のヒット作となった人気漫画が新作映画『ドラゴンボールZ 神と神』に! 原作者・鳥山明がストーリーづくりから参加し、魔神ブゥ戦から数年後を描いている。宇宙規模の破壊神ビルスが悟空に挑戦に襲来し、地球、いや銀河系壊滅の危機をかけて総力戦的なバトルが展開する。

 完全新作というだけでワクワクするが、魅力的なアクションとオールスターによる個性的キャラの活躍が美麗な画風の手描きアニメーションで実現。これは大勢でそろって観ても楽しめる作品になりそうだ。東映と20世紀フォックスの共同配給という国際的なコラボにも注目したい。

【2013年2月28日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)