BDアニメ 厳選!俺流アニメ 第11回『アシュラ』『名探偵コナン 絶海の探偵』

※2013年4月発売号の原稿です。当時公開の劇場映画レビューつきです。

【惹句】70年代の問題作が最新CGアニメで復活! 戦国の極限状況で展開する生々しき映像美。

●飢餓の中で生きる意味が 鮮烈な映像で伝わってくる

 「人が人を喰う」という極限状態を描いて有害図書指定を受けた漫画が40年後に映像化され、映倫審査員G指定を得て第16回メディア芸術祭で優秀賞を受賞する。まさに奇跡の大逆転を起こした作品が、ジョージ秋山の漫画を『TIGER&BUNNY』のさとうけいいち監督がCGアニメ化した『アシュラ』だ。

 15世紀の日本は内乱が続き、大衆は飢饉に苦しんでいた。主人公アシュラは、飢えのため実の母に喰われようとした過去を背負った少年だ。極限状況の中で殺戮をくりかえしてきたアシュラが、人の出逢いをきっかけとして人間性に目ざめていく。そこからが、さらなる苦しみの始まりなのだが……。

 東映アニメーションによる本作は、鉛筆タッチを活かしたCGで描かれ、メリハリのあるモーションで表現されている。問題は「残酷描写」とされた部分だ。それは「生きるとは何か」というテーマを描くために必要不可欠なもの。しかも「3・11」を経た現在の日本は1970年代初頭の公害、エネルギー危機、政治腐敗など原作発表時期の汚れきった状況に似てきている。

 この作品をいま映像化するなら、生々しさは避けて通れない。さとうけいいち監督は特撮などの多彩な経験をふまえて、さまざまな手法をCGにブレンドしてリアルさを増した。液体を撮影して血に見たて、大気中のホコリやレンズに付着した泥などノイズを混入し、カメラワークやレンズを実写に近づけて真に迫る映像にしていく。その真摯な映像が多くの人の心を動かした。

 「生きることの苛烈さ」を描いた映画は、今だからこそ必要だ。Blu-rayの細密な映像は、その迫力を余すところなく伝えてくれる。研ぎ澄まされた刃物のような鋭利な映像。そこに込められた祈りを、全身で受け止めてほしい。

●海の守り手イージス艦を舞台に少年探偵が大活躍!

 ゴールデンウィーク公開の映画『名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)』は、定番となった人気シリーズの劇場版第17作だ。小学生の身体に高校生の頭脳をもつ江戸川コナンが、謎の解明にとりくむ基本路線は踏襲しつつ、難事件のサイズは劇場にふさわしいスケールを設定。

 今回の舞台は、なんと国防の要にあるイージス艦だ。海上自衛隊の全面協力を得てリアルな艦内描写を積み重ね、スパイを突きとめる推理劇と激しいアクションが交錯する。子ども向けと軽視できない映画的興奮が期待できる作品なのだ。

【2013年3月31日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)