出る杭がいない? 育てればいいんです!(第14回) 【 「商品価値」は、本当に商品にあるのか 】

 我々は、「それは何か」、すなわちWhatをちゃんと知らないだけではない。事物によっては「それはどこにあるか」、すなわちWhereもちゃんと知らない。

 例えば、「商品価値はどこにあるか」を我々はちゃんと知らない。世の中では、ビジネスマンなら誰もが日々生んでいるはずの商品価値は、ただ「なんとなく」商品にあると考えられている。

 しかし、商品価値とは、その対価を支払う者である顧客にとっての価値であり、顧客が商品を使用する中で商品についての認識を持つことによってはじめて発生するものだ。ならば、商品価値は、顧客の精神の内部にあり、商品にはないことになる。

 だからこそ、企業のブランドイメージ次第で、商品そのものは変わらなくても、商品価値は変わるのだ。捨てられるなどして商品が物理的に存在しなくなった後でも、商品を思い出すことで商品価値は再現されるのである。

 そして、「商品価値は顧客の精神内部にある」という皆が持っていない考えを持っていると、常識破りの変化を起こすことができる。ソニーが20世紀最大のヒット商品とされるウォークマンを生んだのは、その最たる例であろう。

 ここでは、商品価値を顧客の精神内部に生むことになる商品機能を機能価値と呼び、それに対して、顧客の精神内部の商品価値を使用価値と呼ぶとしよう。

 すると、初期のウォークマンは、機能価値を半減させて使用価値を激増させた商品であると言える。ウォークマンは、オーディオ機器から録音機能を削って再生機能のみを残すことで機器の大幅な小型軽量化を実現し、音楽を楽しむという使用価値をユビキタスなものにした商品であるからだ。

 かつてのソニーは、「商品価値は顧客の精神内部にある」という、皆が持っていない考えを持っていた。その考えに準じて、オーディオ機器には録音機能と再生機能の両方があるのが常識だった中、再生機能しかないオーディオ機器という新概念(これも皆が持っていない考え)を一気に普及させるという常識破りの変化、すなわちイノベーションを起こしたのだ。同時に、膨大な商品価値を顧客の精神内部に創造したのである。