好調セブンイレブンから学ぶ成長の図式と留意点
セブン&アイ・ホールディングス(HD)のグループ企業、ヨーカ堂の苦戦をしり目に、セブンイレブンが好調だ。
役員人事を一新を発表し、カリスマ経営者、鈴木氏の体制から、いかに脱却しようとしているかを、顧客サイドのマーケティング視点で考えてみる。
【苦戦するヨーカドー、好調なセブンイレブン】
セブン&アイ・ホールディングスが、傘下のスーパー「イトーヨーカドー」の、秦野店(神奈川県秦野市)や広畑店(兵庫県姫路市)など4店を、採算悪化を理由に、3月中に閉鎖することが28日、分かった。構造改革による初年度の閉鎖店舗数は、計画通り計20店舗となった。(Sankei Biz 3月1日の記事より)
とあるように、セブンアンドアイホールディングスでは、これまでの拡大路線を修正、新規出店を控え、不採算店の整理を行っている。
一方で、セブンイレブンの方は、プライベートブランドである、「セブンプレミアム」の売上を、2019年度に1兆5000億円、4200品目へ拡大すると発表したり、パンとコーヒーで200円となる、「朝セブン」を発表したりと、好調を維持している。
【ヨーカドーとセブンイレブンの違いはどこか?】
ヨーカドーとセブンイレブンの業績の違いは、異なる業界にいるから、というわけでなさそうだ。
生活者が買い物に行く店として、確かにスーパーは、コンビニよりも頻度が少ない。しかし、周りを眺めてもわかるように、どちらも、特にコンビニエンスストアの方が、人口当たりの出店密度から考えても、純粋な競争は激しい。
ここ半年くらいに、セブンイレブンが打ち出している方向性に、顧客の消費動向をとらえた施策が多い点があげられる。
プライベートブランドの「セブンプレミアム」も、オリジナルのパンのブランドをセブンプレミアムとし、生鮮食品類を強化しつつ、「セブンプレミアム フレッシュ」と、ブランドラインナップを増やすとのこと。
これらも、コンビニにおいて増えている、女性購入者やシニア層を狙っての製品・ブランド開発と言える。
ここ数日で話題になっている、パンとコーヒーのセットで200円の朝セブンも、好調だ。私も先日、青山通り沿いの、セブンイレブンに、朝8時半過ぎに立ち寄ってみたところ、会社に行く途中のビジネス・パーソンを中心に、20代後半から40代くらいまでの男女が、行列になっていた。
商品としての「朝セブン」は、時間帯によって変わる消費者動向をにらんでの施策で、顧客行動を観察し、ニーズをとらえようとした、セブンイレブンの姿勢によるものであろう。
コンビニエンスストアが提供する価値は、その名の通り「利便性」だ。
売っているのはもちろん「商品」なのだが、公共料金を支払らえたり、宅配便を出せたり、ちょっと現金を引き落とすこともできる。
自社の事業を「小売業だ」と定義していたら、これらの付加サービスが追加されず、他の小売業態との競争では優位に立ちづらい。
【セブンイレブンから何を学ぶべきか?】
我々中小企業は、好調なセブンイレブンから、何を学ぶべきなのか?
一番は、ビジネスモデルが「顧客視点」であること。ターゲット層の生活に密着し、先手を打っている点にある。
マーケティング活動が目指すところは、顧客ニーズを解決することだ。そのためには、顧客がどんな行動をし、顧客体験の中で、何を求めているのかを、しっかりと見極めることが第一になる。
顧客行動を把握するには、なにも高額で時間もかかるマーケティングリサーチをする必要はない。中小企業においては、顧客層がとるであろう行動を推測し、隠れた欲求を発見することで、潜在ニーズを見つけられ、解決策を提供すればいい。
30~40代の女性向けの飲食店経営であれば、その顧客層がいそうな場所に行き、誰と買いに来ているのか、何を話しているのか、どんな店に立ち寄っているのか、という「行動観察」をすることで、ニーズを発見できる。自分の日々の生活の中で、こういったことに気づけばよいのだ。
事業の目的は、顧客の創造である。戦略の出発点は、その意味で顧客にあるのだ。
■目次
… 1. 特集 「好調セブンイレブンから学ぶ成長の図式」
… 2. コラム 「ビジネス書を書きたい経営者・事業主が知っておくべきこと」
… 3. 書評 「なぜ一流の男は肌を整えるのか」
… 4. ワンポイント時間術「トヨタのカンバン方式が生む結果捻出方法」
… 5. 著書・イベントのお知らせ
… 6. 編集後記