「犯罪マネーに税金はかかるのか?」「役員を辞めさせずに退職金だけ払う方法」「安倍首相VSキャリア官僚」 『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』

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「犯罪マネーに税金はかかるのか?」

昨今、たびたびニュースで取り上げられる、スパコンの助成金詐欺に関する脱税事件の解説をしたいと思います。まず次のニュースを読んでみてください。

<助成金詐欺>スパコン社長を追起訴 東京地検、捜査終結へ

 スーパーコンピューター開発企業「ペジーコンピューティング」(東京都千代田区)を巡る助成金詐欺事件に絡み、約8億円の法人所得を隠すなどしたとして東京地検特捜部は13日、社長の斉藤元章被告(50)=詐欺罪で起訴=を法人税法違反などで追起訴し、法人としての同社を起訴した。ペジー社を巡る事件の一連の捜査は終結する見通し。

 起訴状や関係者によると、斉藤被告は自身が役員を務めていた別の企業などへの架空の外注費を計上するなどの手口で、2014年12月期までの5年間にペジー社の所得約8億4800万円を隠し、法人税約2億3000万円を免れたとされる。これに伴い、11〜14年に消費税など約4600万円も免れたなどとされる。隠した所得の一部は私的に流用したとみられる。

 起訴された法人税の脱税額は逮捕時から約100万円減った。特捜部は斉藤被告の認否を明らかにしていない。

 斉藤被告はこれまでに、ペジー社の事業開発部長だった鈴木大介被告(47)と共謀し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の12〜13年度の助成事業で、同機構から計約6億5300万円をだまし取ったとして詐欺罪で起訴されている。【飯田憲、平塚雄太、巽賢司】2018年2月13日毎日新聞配信

~ニュース記事ここまで~



解説

この脱税ニュースを見ると、「この人たちは助成金をだまし取っただけじゃなく、脱税までしていたのか」「なんて悪い人たちだ」と思う人もいるでしょう。ですが、その見方は、少し誤解があります。

というのは、この「ペジーコンピューティング」という会社は、まず最初に、開発費用を実際よりも水増しして計上し、助成金を不正に受給したということで、起訴されています。政府に出す書類で、開発費用を水増ししていれば、当然、税務署の申告でもその水増しした数字で提出することになります。

助成金の申請にだけ嘘を書いて、税務署の申告書に本当のことを書くわけはありませんからね。だから、必然的に嘘の税金申告をしているわけで、結果的に「脱税」となっているわけです。つまり、脱税をしようと思って脱税をしたというより、助成金をだまし取るためについた嘘が、結果的に脱税にまで発展したということなのです。

ところで、このペジーコンピューティング社は、助成金の不正受給によって大きな収益を得ていたわけで、脱税した所得のほとんどもこの不正受給がらみのものだと思われます。いわば、犯罪によって収益を得ていたわけです。だから、犯罪収益に対して、追徴課税が課せられたことになります。

これって、ちょっと不思議に思いませんか?犯罪で得たお金に対して、税金はかかっているのですから。極端に言えば、オレオレ詐欺とか、違法薬物の販売で得た収益に税金をかけるのと同じことなわけです。オレオレ詐欺とか、違法薬物の販売の収益に対しても、税金はかかるのでしょうか?

答えはイエスなのです。税法では、特別の規定がない限り、あらゆる収益に関して税金がかけられるようになっています。

だから、犯罪で得たお金であっても、税金はかかることになっているのです。詐欺などの経済犯罪が起きたときには、その直後に同じ容疑者が脱税で摘発されることが時々あります。それは、こういう背景があるからなのです。

しかし、詐欺などの経済犯罪って、だいたい儲かった分は罰金で持っていかれますよね?しかも、その罰金は、経費などで差し引けないのです。つまり、罰金はなかったものとして、儲かったお金だけが収益としてカウントされるのです。

つまり、詐欺などで儲かった人は、罰金で全部儲けを差し出したとしても、税法上は、その儲けの全額に対して税金がかかってくるのです。悪いことをすれば、それだけ報いも大きいということでしょうね。

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