女王様のご生還 VOL.10 中村うさぎ

先日、神田つばきさんと対談してて「セリクラ」というものの存在を初めて知った。

なんでも、男たちが女たちに入札してデート権をゲットするシステムらしいが、最終的な決定権は女の方にあって、入札者の中から好きな相手を選べるらしい。

必ずしも高額入札者とデートしなきゃいけないわけではないそうだ。

その一方で、どんな好みの男がいても、相手が自分に入札してくれなかったらデート相手はできない。

男が女を選び、女がその中から男を選ぶ、というシステムだ。



あくまで「デート」であるから売春ではないが、外でのデートで援交に発展する可能性は充分にあるだろう。

ただ、それは「自由恋愛」の範疇なので、店側は「売春斡旋」の罪には問われない。



私が面白いなぁと思ったのは、最初に男が女に入札する、というシステムだ。

フェミニストが聞いたら怒りそうなシステムだが、私が思うに、一部の女には「選ばれる快感」というのが絶対にある。

いや、一部どころか、かなりの多数ではないかと思われる。

男が競って自分に入札するのは、それが「男権主義的」だろうが何だろうが、女にとっても快感なのだ。

そして自分は女王のように、入札者の中から相手を選ぶ。

女の方から男に入札するシステムだと、この快感は半減するだろう。



つばきさんの話によると、この「セリクラ」に主婦の人たちを何人か連れていったところ、みんなすっかりハマってしまったという。

うーん、わかる!

専業主婦たちにとって「自分の性的商品価値」を確かめる機会は滅法少ない。

夫とはとっくにセックスレスだったりして、だからといって他の男たちと接するチャンスもなかなかなく、「自分はもう女として終わりなのか?」という焦燥感がどんどん募っていく。

そんな中、男たちが自分に入札してデート権を争うなんて遊び、これ以上ないほど楽しいのではないだろうか。

入札がたくさんあったら、それだけでいい気持ちだし、もしかしたら素敵な人と出会えるかもしれない。

しかも、あくまで「デート」だし、浮気ってわけではないから、最悪感も少ない。

専業主婦にとってはドキドキの冒険感にあふれた娯楽なのではないか。



と、すっかり盛り上がって「私も行きたい!」などと叫んでたら、一緒にいた女性カメラマンが「楽しそうですけど、自分に入札者がひとりもいなかったら悲しいですね」と言った。

うん、確かにそれは痛い! イタ過ぎる!

しかし私の場合、「入札者ゼロ」という前代未聞の結果になっても、それはそれでネタとして美味しいのである。

女としては傷つくが、中村うさぎとしてはちょっと嬉しい。

こんな自虐ネタ、滅多にねーよ!

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