なぜターゲットを“絞る”のか?
【なぜターゲットを“絞る”のか?】
ターゲティングの話をすると、「なぜターゲットを絞るのですか?」という質問を多くいただく。ターゲットを絞る、と聞くと「うちの商品は、世の中のたくさんの人に買ってもらいたいのです」「そんなに絞ってしまったら、売れなくなってしまいませんか?」と考えてしまう方が多いようだ。
しかし、モノは余り情報があふれている現在、誰にでも好かれるプロダクトは世の中にない。万人受けするプロダクトが無い昨今、マーケティングを仕掛ける私たちは、「人は世の中の99%のモノを欲しくない」という認識でいるべきだ。
料理に使う塩にまでも、さまざまな銘柄があるくらいだ。沖縄に行った時などは、1店舗まるまる塩を売っているショップまであり、雪塩というネーミング一つとっても、何種類かのブランドが売られていた。
巷には、モノやサービスがあふれている。
「誰にでも愛されるジュースです!」とアピールするよりも、「健康を第一に考えている女性の方のためのジュース」と謳う方が、「あ、これ私にぴったりだ!」と数多いジュースの中から選んでもらえるようになる。
世の中に平均的な「一個人」はいない。自社のプロダクトに価値を感じる「絞り込んだ」層の心に、「響く表現で」メッセージを送ることで広告の効きを上げていく。
絞るということを「他を捨てる」と解釈せず、絞ったターゲット層を中心に考える、と、とらえればよい。
核になる層を中心に、周辺の層に「横展開」の仕組みを作っておき、拡大をしていけばよい。
我々が考えているよりもはるかに多くの人々が市場にいるので、「絞ると他のお客様に買ってもらえなくなる」との心配は不要なのだ。
ターゲットを絞る最大の理由は、「投資対効果を最大化する」ため。
そのために、狙った市場に向け、人員や予算といった経営資源を割り当てていくことで、効率よく売り上げと利益につなげていく。
ビジネスをドライブするために必要な、「ヒト・モノ・カネ・情報・時間」といった、“経営資源”はすべて「有限」。
限られた経営資源を活用し、最大のリターンを得るために、不要な部分の優先順位を下げ、「必要な大多数(=Critical Mass)」を規定し、アプローチをしていくべきなのだ。
【ステップその1~STP】
ターゲット設定をする目的は、「競合と比べて優位に戦える」ようにすることにある。
市場のすべてを狙うのではなく、自社の価値を理解し、適正な価格で購入してくれる顧客層が十分にいる、「自社が有利に戦える場所」を見つけ出す、ということを目指す。
そのステップとして、STPというフレームワークを紹介する。
市場全体を、
1. 【分ける】様々な切り口で(Segmentation)“集団”に切り分け
2. 【まとめる】各要素を組み合わせ“塊”(Targeting)にまとめ
3. 【立ち位置を決める】競合より優位に立てる場所(Position)を探しそこで戦う
これらそれぞれの頭文字をとってSTPと呼ぶ。
マーケティング活動は、自社の顧客は誰か?を定義することからはじまる。
また、この質問は一度定義したら終わりではない。市場は私たちが考えているよりも早く、不定期的に動いていくため、これは「永遠の課題」となる。
STPは、その基礎になるフレームワークなので、しっかりと頭に入れておきたいところだ。
最初は、切り口で細分化(=細かく分けること)した、「集団」を作ることから始める(=Segmentation)。
市場を「4つのカテゴリー」の中にある、それぞれの区分で細分化していきます。