[ビジネス発想源 Select] 第4114回:発表力の時代

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【第4114回】発表力の時代 (2016年2月10日配信)

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これまで、外国や英語にかぶれた連中がよく

「日本人はディベートが下手だ!欧米ではディベートは教育課程でやるのは当たり前。日本ももっとディベートを取り入れるべきだ!」

ということを主張してきました。

確かに、欧米人はディベートの基礎力があるので、外交でも貿易でも、凄まじい交渉力を発揮し、日本はやり込められたり負けたりしたことも多く、交渉力の向上は取り組むべき問題の一つでしょう。



ただ、私はこれからの日本人には、ディベート力よりも必要なものがあると思います。

「発表力」です。

ディベートはあくまでも「討論力」であり、間違った結論でもごねて覆せる論理力を養うものだから、間違った結論の場合には「見苦しい言い訳」だと簡単に信用を失うので日本人には向いておらず、「討論力はないけど、やることはいつも正しい」という信義を守っていれば、たいてい勝てます。

ただ、やることはいつも正しい上に、「正しいことをやっているんですよ」ということを常に発信し続けていくことで、より信用が増します。

だから、日本人には「討論力」よりも「発表力」の鍛錬のほうが必要だと思います。



で、「発表力」とは何かというと、人前で自分の話をプレゼンテーションしたり、人前で自分の文章を公開したりすることです。

例えば、日本の小学生は夏休みに自由研究を行ったり、中高生は文化祭で研究発表の展示をしたりします。

これは、発表のように見えますが、校内の非常にクローズドの中での発表ですから、結局は非公開と同じです。

「発表力」を磨くためにやることは何かというと、これを東京駅やニューヨークなどで展示したり、インターネットで全世界に生中継したりすることです。

つまり、完全公開というわけですが、「完全公開ならば、こんなクオリティでいいのか?」と常に考えることになります。

全世界に公開されるという目的地があるなら、子供たちは「どんな人に見てもらえるんだろう」と、めちゃくちゃワクワクして研究します。

研究内容の話だけではなく、イラストも使おうとか、カラフルなほうが見やすくなるよねとか、受け手のことを考えた表現力や美的センスもフル発揮されるため、全力で取り組むようになります。

さらには、どこかに展示されることになれば、「いろんな人に見てほしい」と、その展示会場の集客も考えるようになり、インターネットで公開されるとすれば、SNSでどうやって拡散しようかと考えます。

「電子書籍で売ったら100円で売れるんじゃないか?」「作品に値段をつけたら売れるんじゃないか?」といった金勘定の発想も鍛えられるでしょう。



今の日本の教育に欠けているのは、完全にそこだと思います。

「公開発表」という概念が全くないから、小学生の自由研究も、大学生のゼミ発表も、ものすごくこぢんまりしたものにしかならず、そんなことに余計な時間をかけさせられているのです。

同じ時間をかけるなら、もっと多くの人に目にしてもらえる、もっと少しでもお金になる、ということを考えさせるべきで、「発表力」を鍛えることを考えるだけで、それだけ様々な能力を鍛えられるようになるのです。

ましてや、今は動画撮影が簡単な時代です。

昔は何かあれば手元の手帳にメモを残したり、ガラケーで文字を打ってメールで送ったりしましたが、今はすぐに動画で撮ることができます。

とっさにカメラを構える、とっさにカメラを向けられる、そういう対処もできるようになれば、必要なことを伝える密度はどんどん高くなります。

カメラを向けられても、必要なことは話せる、という能力が、これからは必要になるかもしれません。



ともかく、「発表力」はこれからはものすごく大事なスキルになると思います。

能力を発揮して大きな功績を挙げていく人ほど、その後に講演の依頼が来たり、執筆依頼が来たりするのです。

できる人ほど、発表の場は必ずやってきます。

「講演はちょっと」「インタビューは苦手で」などと言っている場合ではなくなってきます。

また、社員全員が発表力を鍛えられていれば、取材が入ったり社内でPR動画を撮ったりしても、誰もがカメラに向かって楽しそうに話すことができれば、「この会社はみんなポテンシャル高いな」と大きな信用になっていくわけです。

社内で読書会や勉強会をするのもいいですが、「町内で発表会をやろう」「全世界にネット配信しよう」と、公開の発表の場を作ってやればいいのです。

スポーツが強くなるなら大会に出るように、ピアノが上手になるなら発表会に出るように、自分たちがやることが公開発表になるという機会を作り、発表力をどんどん鍛え上げていくことが、これからのビジネスマンに求められるでしょう。



【今日の発想源実践】(実践期限:1日間)-------------

・社内で「全世界に発表する」ことを前提とした勉強会を企画する。どんなことを研究・整理し、どのような形で地域や全世界に発表するか。案をノートにまとめる。



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