「確定申告現場の裏側」「国税庁長官って何者?」「今からでも間に合う還付申告」『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』

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今回は「確定申告現場の裏側」「国税庁長官って何者?」「今からでも間に合う還付申告」の3本立てです。

●確定申告現場の裏側

昨日は確定申告の最終日でしたね。みなさんは、無事、確定申告を終わられたでしょうか?私も毎年確定申告に行きます。私は自分で申告書をつくり、提出しに行くだけです。なぜ郵送にしないか、というと、税務署の受付印が欲しいからです。税務署に直接提出した場合、申告書の控えに税務署員が受付印を押してくれます。

この受付印が押された申告書の控えは、「私はこれだけ収入があり、これだけ税金を納めました」という証明になります。銀行でお金を借りるときなどには、これが必要となることが多いのです。自営業やフリーランスの方は、ご存知の方が多いはずです。

ところで、今回、私が申告書を提出しにいったときのことです。受付の税務署員は、私の提出書類を確認し、その書類のいくつかに受付印を押してくれましたが、肝心の申告書に受付印を押してくれなかったのです。私が「申告書にも押してください」というと、「あ、すみません」と言って押してくれました。が、申告書が数枚あったのですが、受付の人は一枚目だけしか押してくれませんでした。

私が「全部、押してください」というと、「これにも押すんですか」と驚いたような顔をして、全部押してくれました。私が何を言いたいのか、というと、この受付の税務署員は、申告書の受付にまったく慣れていないということです。実は確定申告期には、こういうことは非常によくあるのです。

というのも、確定申告の時期は、税務署では全署をあげて確定申告業務を行います。この時期、税務署にはたくさんの人が来ます。だから、全署員が申告相談、申告会場の設営、納税者の誘導、受付などの仕事をしないと回らないのです。

が、税務署の中には、本来は所得税の担当ではない人もたくさんいます。というより、個人の所得税の担当者というのは、税務署員全体の4分の一くらいしかいません。つまり、4分の3の税務署員は、個人の所得税申告は専門外なのです。そして、所得税の専門の署員は、申告相談などの業務に行っていますので、受付などには、専門外の職員が派遣されていることが多いのです。だから受付では、間違った対応や、不十分な対応をされるケースが時々あるのです。

今回の私のケースにしても、もし申告書の控えに受付印を押されないまま帰ってきてしまったら、銀行などに提出しても「これは効力はありません」ということで、突き返されてしまいます。わざわざ、自分で申告書を提出しに行った意味は、まったくなくなるわけです。たまたま、私は元税務署員であり、確定申告時期の受付などには、慣れない職員がたくさんいるということを知っていたので、受付印を押してもらうことができました。でも、一般の人の場合、申告書の控えに受付印を押してもらえなくても、「そういうものだろう」と思って、そのまま帰ってしまうことが多いはずです。税務署員が間違った対応をするとは、普通の人は思いませんからね。

税務署は、もう少しきちんと教育をすべきだと思います。専門外の業務であっても、税務署員として業務をしているわけですから、間違った対応をして、市民に迷惑をかけるようなことがあってはならないはずです。民間企業であれば、どんな忙しいときであっても会社の窓口に立つ人が、そうそう間違った対応などはしませんよね?やはり官庁の職員というのは、「緩い」し「甘い」のです。

で、税務署に行く一般の方にも、気を付けていただきたいのです。税務署員に落ち度があった場合、後からいくら税務署に文句を言っても始まらない、というケースも多々あります。「税務署員は必ず正しい対応をする」とは思わずに、何か疑問点があれば、どんどん突っ込むべきなのです。そうしないと、自分が損をすることになりかねないのです。

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