BDアニメ New Frontier 第2回『ストライクウィッチーズ』

※2010年7月発売号の原稿です。

【惹句】ディテール鮮明な美少女&ミリタリーで「萌え×燃え」 胸が熱くなる、感動の空中バトル!

 ネット検索では「パンツじゃないから恥ずかしくないもん」という爆笑フレーズといっしょにタイトルが表示される。思わずニヤニヤしながら観始めると、さわやかな感動に心が洗われ、いつしか泣けてくる不思議な輝きが宿った作品――それがTVアニメ『ストライクウィッチーズ』(08)である。

 ウィッチーズ(魔女)と呼ばれる少女たちが、零戦やスピットファイアなど第二次世界大戦の戦闘機に似たストライカーユニットをブーツのように装着、耳と尻尾が生えた姿に変身してネウロイと呼ばれる侵略者と戦う。軍服をまとった彼女たちの下半身は生足丸出しで下着みたいなものだけだが、それを「パンツじゃない」と言い張るところ含めて、「オタク向け萌えアニメの典型」と言われれば返す言葉はない。

 だが、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品アニメーション部門受賞には、それなりの真剣な理由がある。ミリタリーファン、萌え美少女ファンをまとめてゲットみたいな外面の装飾に下がった心のガードを突破し、飛びこんでくるのは、あまりにも真っ直ぐで姿勢を正したくなるような少女たちの情熱のエネルギーなのだ。

 主人公の宮藤芳佳は「他人のため、自分にできることをする」という理想を実現しようと戦うが、幾多の苦難にぶつかる。人類存亡の危機に世界中から集まってきたウィッチーズの仲間と築いていく信頼や、亡き父の残したユニットとの縁など、自分に与えられた大きな使命に気づきながら、固い信念で奇跡的に苦難を突破し、成長をとげる彼女の情熱は、恥ずかしい美少女ビジュアルに油断した心の奥深いところへグサリと突き刺さるのである。

 バトル描写もTVシリーズのレベルを大きく超えた見応えあるもの。ビームを放ち、意志を見せずに迫る謎の超兵器に対し、ウィッチーズたちは宙を縦横に舞って戦う。シールドを展開し、銃器や刀剣で強敵に立ち向かう少女の姿から、作り手の情熱もホンモノであることが充分に伝わってくる。

 画質はSDからのアップコンだが、もと情報の密度が濃いためBlu-ray化で真価を発揮するシーンも多い。各国美少女の上気した肌のグラデーションや、制服などの微細なデザインやカラーリング、空戦シーンの立体的なボリューム感も存分に楽しめる。声優のライブ映像、212ページの分厚いマニュアル添付に、英語版の音声と字幕など多岐にわたる特典も嬉しい。第2シーズンとあわせ、一気に鑑賞してはどうだろうか。

※掲載時が第2シーズンの放映開始月でした。

【2010年6月28日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)

氷川竜介

1958年兵庫県生まれ。アニメ・特撮研究家、明治大学大学院客員教授。東京工業大学卒。文化庁メディア芸術祭審査委員、毎日映画コンクール審査委員などを歴任。日本SF作家クラブ会員。海外での展示会・映画祭での講演経験多数。文化庁向けに「日本特撮に関する調査報告書」「日本アニメーションガイド ロボットアニメ編」を執筆。主な編著、参加書籍:「20年目のザンボット3」(太田出版)、「世紀末アニメ熱論」(キネマ旬報社)、「アキラ・アーカイヴ」(講談社)、『細田守の世界――希望と奇跡を生むアニメーション』(祥伝社、2015年)、「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム from 1989」(国書刊行会)など。