出る杭がいない? 育てればいいんです!(第13回) 【 「本質」とは何か 】

 さて、お待ちかね。実際の「出る杭研修」で受講生に考えさせることを、幾つかのテーマに沿って細かく見ていこう。

 まず、最初の「深く考えるセクション」の冒頭を飾るテーマは、ズバリ、「本質」とは何かである。

 これは、極めつけの難題と言える。古代ギリシャの哲学者たちによって本質の探求が始まってから2000年を超えるが、本質が何かに定説はない。今なお人類は、本質とは何かが分からないでいるということだ。

 しかし、一般的に、本質は「普遍的なもの」とされる。そして、「普遍的なもの」とは、「ある事物全てに共通するもの」、正確には「ある事物全てに共通し、他の事物全てに共通しないもの」である。ならば、本質とは、「事物が持つ普遍的な特徴」であり、「○○という普遍的な特徴を持つもの」でもあることになる。

 内、後者は、ある事物を対象に「それは何か」(という問いに対する答え)であり、前者は、「それは何か」を規定するものだ。また、前者は、よく知られる本質の解釈である「それなしにはその物が存在し得ない性質・要素」でもある。

 そして、我々は、ほぼ全ての事物を対象に「それは何か」を知り、それに基づきほぼ全ての思考をし、コミュニケーションなどの行動をとる。だから、本質は、我々の思考と行動の基盤となるものだ。

 世の中には、本質は日常に縁遠いものとの印象があるが、そうではない。本質は、誰にとっても、それなしでは片時も過ごせないほど身近なものなのである。

 ところが、よくよく考えてみると、「事物が持つ普遍的な特徴」を特定するには、この世の全ての事物の全ての属性を知る必要がある。いや、属性もまた事物であるから、要は、この世の全ての事物を知る必要があるのだが、それは不可能なことだ。よって、我々が本質(「事物が持つ普遍的な特徴」や「○○という普遍的な特徴を持つもの」)とするものは、人類が知り得る事物の範囲内でそう思うものでしかない。

 だから、厳密に考えれば、我々は、我々の思考と行動の基盤となるものを、ただの一つもちゃんと知らないことになる。

 このことに気付くことで、頭の中のS&B(スクラップ&ビルド)、すなわち知識や考え方全体の根本的な再構築は、激しく始まる。加えて、他のテーマに謙虚に取り組む姿勢も生まれるのである。

 なお、本質を「不変のもの」と考える者もいるが、この世に変わらないものなどなく、よって、この考えは誤りである。例えば「人間って変わらない」と言うときの「変わらない」は、人間には、いつの、どこの、誰にでも共通するものがある、すなわち人間全てに共通するものがあるということであるから、本当は「普遍的なものを持つ」という意味なのだ。

 また、哲学では、事物の属性の内、本質以外のものを「偶有性」と呼ぶ。事物の本質は、事物全てに当てはまるものであるのに対して、偶有性は、たまたま個別の事物に当てはまるだけのものである。

 人類は、本質とは何かが分からないできた。だから、そうとは気付かずに事物の本質を知っている場合を除けば、事物の偶有性に振り回され続けてきたのである。



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