アニメ・エキスポ(AX)OVA20周年討論レジュメ

※AXは「アニメ・エキスポ」の略。1992年からアメリカで行われているコンベンションで、2004年には東京で開催されました。その企画用に作ったレジュメです。当時20周年だったOVAは日本よりもむしろアメリカで長く愛されているということもあって、藤田健次氏のプランニングで作成しました。これを元にスライドを起こしたような記憶もありますが、定かではないです。使える映像が限られていたはずなので、もしかしたら全方位的ではないかもしれません。藤田氏急病のため、現場では井上博明氏と映像交えてトークを進行しました。話すこと前提なので表記とか適当で誤記や多少の事実誤認もあると思いますし、受けねらい的な乱暴な表現(笑)も残ってて関係者の方々ごめんなさいでもありますが、書き原稿だとどうしても抜けるニュアンスもあって面白いと思ったので、そのまま再掲します。

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AX東京 OVA20周年討論 レジュメ(案)

                     2004.01.13 氷川

●ビデオの状況

 ・ビデオデッキの本格普及は1980~81年ごろ

 ・デッキ=20万円

 ・テープ=2000~3000円

 ・1982~1983年には高額のレンタルビデオ屋が開店

 ・レンタル代:定価の10%(1500円くらい)

 ・LD時代の予感(83年ごろか?)

 ・ビデオソフト商売の端緒

  →「幻魔大戦」('83)は公開と同時にソフト販売

   「ナウシカ」('84)にいたっては、LDを同時販売

●OVA前史

 ・70年代終盤:テレフィーチャー・アニメ形式が発生

 ・24時間スペシャル、日生など大スポンサー

 ・1982年のマクロスにも名残(1,2話の同時本放送など)

 ・エモーションレーベルの誕生

  →厳選された作品群。内外、特撮への目配り。

   それまではメーカー側のロジックだったのが、ファン寄りになった

 ・模型雑誌との連動開始(モデルグラフィックスの表4広告)

 ・バンダイ:2次商品→1次商品への転換

●OVAへの期待

 ・作家性の熟成 → もっと自由に作ったものが観たい

 ・コマーシャリズムからの解放 → 「アリバイとしての玩具」不要論

 ・TVコードからの解放 → 暴力、セックスなどのアダルト描写

 ・権利の問題:作家への還元(実際には稀少)

 ・総じて「可能性」を信じていたのだが……

●ダロス(1983年)

 ・月面都市における階級闘争話

 ・戦後日本の縮図的な描写(三鷹事件の模写など)

 ・売れ線ねらいのデザインライン:安彦調、ガンダム声優など

 ・鳥海永行(ガッチャマン)+押井守(うる星)

 ・当時、押井監督は『うる星TV』と『ビューティフルドリーマー』の

  三本建て体制

 ・作画のピーク→山下将仁のアクション、エフェクト

  (スタジオぴえろは『ニルス』等の動物、生活描写派だった)

 ・HiFi以前。でも仕様はステレオ。

 ・30分7800円(6800円だったか?)

(Negative side)

 ・分割発売だった

  →遅延に継ぐ遅延

  →30分増えて、4部作になった

 ・話数順でない発売

  →ストーリーよりも映像偏重

 ・難解なストーリー

(Point)

 ・バラまかれる薬莢 → 「マトリックス」への影響

●メガゾーン23part1(1985年/3)

 ・23=東京23区

 ・美樹本 晴彦+平野俊弘+石黒監督

  (マクロス人気を引っぱる形で)

 ・バイク変形

 ・バーチャルアイドル

 ・主人公が負ける蹉跌の物語

●魔法の天使クリィミーマミ ロング・グッドバイ(1985年/6)

 ・「永遠のワンスモア」84/10 総集編+後日談

 ・人気作品の続編をビデオで(の走り)

 ・映画撮影のバックステージもの

  →立体物展開とのマッチング(B-Clubなど)

 ・スタジオぴえろ+望月智充監督

  伊藤和典+高田明美

 (押井監督もモデル出演)

●戦え!イクサー1(1985年/10)

 ・立ち上がった市場の受け皿的作品

  レンタル屋 → アダルトとスプラッター

  マンガで美少女エロ → レモンピープル(久保書店の出資)

 ・作画で肉と粘液が描写可能に

 ・平野俊弘が監督:特撮感覚の横溢

 ・音楽:渡辺宙明

●メガゾーン23part2(1986年/5)*劇場(落ちた)

 ・梅津泰臣にキャラが変更。監督は板野一郎。

 ・具体的ブランド描写の走り:ビールがハイネケン、バドワイザーなど

 ・アダルト志向の強化(ベッドシーンが劇場のみでカット)

 ・グロテスク描写

●ガルフォース(1986年/7)*劇場

 ・園田健一キャラ

 ・アートミック全盛期

 ・美少女しかいない設定

 ・動物的ヒロインの走り

●ブラックマジックM-66(1987年/6)

 ・北久保弘之監督

 ・士郎正宗:原作者のこだわり(直筆コンテ、ナウシカの影響)

 ・リアリズム作画の端緒(沖浦啓之氏)

●トワイライトQ 迷宮物件FILE538(1987年/8)

 ・トライライトゾーン+ウルトラQ-ウルトラゾーン

  (日本のアウターリミッツ=ウルトラゾーン)

 ・ディーン制作

 ・背景を写真加工:後の写実的背景の先がけ

 ・虚実混淆の物語

●機動警察パトレイバー(1988年/4)

 ・86~87年ディザースターからの回復 → ブロックバスター

  4800円、CM入り

 ・30分 全6話フォーマットの確立

 ・限りなくTVアニメに近いレベル、尺、内容

 ・クリエイター集団:ヘッドギア

 ・押井守監督、第二の出世作

●トップをねらえ!(1988年/10)

 ・パトレイバーとのコンペティション

 ・庵野監督デビュー作

 ・オタク的要素の集大成 → SF風味

  ガイナックスの芸風まんま(ダイコン以来)

●ジャイアントロボ(1992年/7)

 ・『宇宙戦艦ヤマト』の末裔

 ・小林誠メカ

 ・今川泰宏演出

 ・レトロキャラ+荒々しいアクション

 ・完結までに6年がかり

●天地無用!魎皇鬼(1992年/9)

 ・AIC作品

 ・思わぬ伏兵的にヒット

 ・第二世代『うる星やつら』的要素

 ・女の子回転寿司状態、温泉話などなど

  90年代中盤以後のギャルアニメ、ギャルゲーの雛形

 ・複雑多岐な続編(何本あるんだ?)

●青の6号(1998年)

 ・フルデジタル、メカフル3Dポリゴン、5.1ch

 ・究極の「ハイターゲット」作品か?

 ・前田真宏監督

 ・GONZOの方向性を決めた作品

以上です。