BDアニメ 厳選!俺流アニメ 第2回『宇宙戦艦ヤマト』『おおかみこどもの雨と雪』

※2012年6月発売号の原稿です。当時公開の劇場映画レビューつきです。

【商品名】宇宙戦艦ヤマト TV BD-BOX 豪華版

【惹句】アニメのすごさを世に知らしめた名作。ついにオリジナルの高画質・音質が再現される!

●時代を変革した歴史的名作 初出資料を満載してBD化

 最新作『宇宙戦艦ヤマト2199』の濃密な映像を観るたび、1974年に突如として出現したTVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』のオリジナルとしての偉大さを思い知る。なにしろ主なデザインや物語展開は『2199』でも大きな変更がない。それほどいまだに「すごい!」と言わせるインパクトがあったのだ。その往時の熱気がよみがえる絶妙なタイミングで、本家の1974年版が全話収録BD BOXでリリースされる。

 この作品で人生がガラリと変わってしまった筆者としては感無量だし、もちろん全面的に協力している。アニメ雑誌もビデオデッキもなかった時代、高校生だった筆者たちは乏しい情報をたよりに制作スタジオへ足を運んだ。原画、絵コンテなど、捨てられる膨大な資料をお預かりして37年余。今回の特典ディスクでようやくその大半を公開できることになった。

 解説書では3月に急逝された演出の石黒昇さん(ご本人の言では「現場監督」)のエフェクトアニメを中心とした業績に触れ、出渕裕氏、庵野秀明氏らヤマトファン出身のクリエイターや効果音の柏原満氏らとオーディオコメンタリーにも出演するなど、惜しみない参加協力ができたと思う。

 今回のBD化で「セル画そのままの映像」と「オリジナルそのままの音」がようやく再現できるということも価値が高い。当時スタジオに出かけたのはテレビや印刷物の色が不正確で、本物の色のわかるセルが欲しかったからだ。BDは本物のまま観られる夢のメディアなのだ。

 であれば、さらにそのオリジナルにあたる資料も同時公開されるべきだと思った。「テレビまんが」を「アニメ」に進化させた本作の情熱を全方位的に記録した商品として、まさにファン必携アイテムと言えよう。

●細田守監督新作は人生の 真価に迫った子育てアニメ

 今月の必見は2012年7月21日公開の映画『おおかみこどもの雨と雪』。『サマーウォーズ』の細田守監督による3年ぶりの完全オリジナル新作だ。「おおかみおとこ」と結婚し、二児を出産した母の子育てを、苦労と驚きと喜びの12年間として濃厚に描いている。起きる事件は「おおかみに変身」以外は、「いかにもありそう」ということばかり。

 母親、姉と弟と三者の視点を編みあげながら、成長過程で得るもの失うものを情感豊かに描いている。だからと言って説教くさいわけではなく、共感できる出来事や心情をユーモアたっぷりに描いているのは、さすが細田守監督。アニメの可能性は、まだ無限大だ。

【2012年6月29日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)