「六本木会員制クラブの脱税」「経営者の妻の給料の払い方1」「仮想通貨の本質」『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』

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■六本木会員制クラブの脱税

昨日の産経新聞で興味深い脱税ニュースが報じられていました。まず次の記事をご覧ください。

「1億円脱税、六本木の会員制高級クラブ元経営者を告発 東京国税局」

約1億円を脱税したとして、東京国税局が所得税法違反や消費税法違反などの罪で、東京・六本木の会員制高級クラブなどを経営していた男を東京地検に告発していたことが15日、関係者への取材で分かった。

関係者によると、告発されたのは、五十嵐優光(まさみつ)元経営者(53)=川崎市麻生区。五十嵐元経営者は平成25年1月~28年9月、ホステスや従業員の給与から源泉徴収した所得税を納付しなかったほか、高級クラブやバー、貸しスタジオなどの売り上げを一切申告せず、所得税や消費税など計約1億800万円を脱税したとしている。脱税で得た資金は経営する別会社の事業に充てていたという。

五十嵐元経営者は、従業員名義で店の賃貸借契約をしたほか、店名や所在地を変えるなどしていたとみられ、国税庁は、経営実態を秘匿し、脱税の発覚を免れようとしたとみている。クラブなどはすでに閉店、営業譲渡しているという。(産経新聞  2018年5月15日配信)

~新聞記事ここまで~

著者による解説この事件は、水商売系の脱税のありとあらゆる手口を駆使したもので、水商売系の脱税の「モデルケース」とさえいえるでしょう。まず目につくのが、経営者の正体を隠していたという点です。水商売や風俗業というのは、実質の経営者が誰だかわからないようになっているケースが多々あります。そして、実質の経営者が誰かわからなければ、税務署は税金をかけることができないのです。税務には「実質課税の原則」というものがあり、名目上はどうであれ実質的に収入を得ている者が税金を負担する、ということです。だから、この会員制クラブも、従業員の名義で店を借りるなどし、おそらく名目上の責任者は従業員になっていたと思われます。しかし、この従業員が実質的な経営者ではない場合、税務署はこの従業員に税金を課すことはできず、本当の経営者を探し出さなくてはならないのです。

しかし、この経営者は、最初から税金を逃れる気満々です。もちろん、店の名義人となっている従業員には、自分の正体は絶対、明かさないように釘を刺していたでしょう。もしかしたら、従業員にさえ、自分の本当の正体は明かしていなかったのかもしれません。また店名を変えたり、納税地となる所在地を頻繁に変えるなどして、なかなか実態をつかまれないようにしていたのです。店名を変えたり、所在地を転々とするというのも、水商売や風俗業の脱税の定番スキームです。所在地が変われば税務署の管轄も変わることが多いので、税務署は継続的に追跡することができません。

では、なぜ今回、この経営者は摘発されたのでしょうか?税務署は、以前から目をつけて、監視をしていたのでしょう。所得税などを1億円以上逃れていたということは、収入にすれば2~3億円あったということになります。それだけの大きな商売をやっていれば、税務署としても、なにかしら気づくはずです。会員制クラブは接待交際で使われることも多いはずなので、その際には領収書を発行していると思われます。その領収書が、まわりまわって税務署の手に落ちたことも考えられます。またこの経営者の口座に巨額の金が出たり入ったりしていれば、税務署は「この口座は何だろう?」ということになり、口座の持ち主を丹念に調べたということも考えられます。そうこうして、この経営者と会員制クラブが関わりをつかんだのでしょう。そして、税務署よりも広い範囲で税務調査を行える国税局に報告され、国税局査察部の事案として、この事件を追っかけることになったのでしょう。

ただし、だからといって、この経営者の脱税が洗いざらい解明されたとは限りません。この脱税した1億800万円というのは、国税が明確に証拠を押さえた額だけです。この手の脱税は、国税側はその全貌を完全に把握することはできません。というのも、不特定多数の人から現金で受け取った収入というのは、完全に把握することは非常に難しいのです。領収書を発行していない場合も多々ありますので、そういう収入というのは、そのお金をどこかに預けたり、費消しないと、どこにも記録は残らないのです。もし、どこにも預けずに現金で隠し持っていて、現金払いでお金を費消していたような場合、まったく記録は残りません。だから、その分の収入は、把握できないことになります。国税としては、現在、把握している記録だけを元に、収入額を計算するしかないのです。水商売や風俗業というのは、それほど脱税がしやすいということです。しかも、この業界の経営者は、納税意欲は非常に薄く、脱税するためにありとあらゆる努力をしている場合が多いのです。今回の経営者のように。

■経営者の妻の給与の払い方1~妻が仕事をしていないのであれば非常勤役員にしよう~

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