中小企業はフィンテックにどう備えるべきか?=理央周



知っておくべきフィンテックの概念

ここ1、2年よく聞くようになってきた、「フィンテック」という言葉。

金融という意味のファイナンスと、テクノロジーを合わせて略した造語で、アメリカでは5、6年前から、日本では2014年に新聞が取り上げて、ビジネス・パーソンの間に普及してきたと言われている。

【フィンテックの定義】

フィンテックとは読んで字のごとく、ITを使った金融の効率化 などと定義できる。

しかし、金融IT分野のベンチャー企業のことを、フィンテックやフィンテック企業と呼ぶこともあるので、フィンテックが、金融テクノロジーそのものを指すことだけでなく、フィンテックを扱う企業のことを指す場合もあるため、かなり広範囲での意味を持つ。

したがって、フィンテックそのものが広範囲に、しかも複雑になってきているので、フィンテックが何を指すのかがわからない、という声も多い。

中小企業の経営者においては、「ITを使うお金の流れ」と理解しておけばまずはいいであろう。

【フィンテックの何に備えるべきか?】

フィンテックが世の中に浸透してきた最大の理由は、スマホをはじめとする、情報機器のモバイル化、IoT化にある。

より身近になり、さらに簡単にできる環境が整ってきたのだ。

これによって、ビジネスの環境は大きく変わる。銀行などの金融機関が独占していた業務を、個人や新興金融企業が代替できるようになるのは、中小企業にとって、大きなチャンスだ。

フィンテックを理解する時に、まず考えておくべきは、その使われ方。「顧客の利便性向上」と「業務の効率化」とに分けられる。前者は、スマホのカード決済や、オンラインゲームでの仮想通貨などがあげられる。これにより、公共料金の支払いサービスができるし、請求書の印刷と郵送コストが抑えられる利点がある。

後者は、保険業界でのビッグデータ分析による、これまでできなかった査定実務での作業効率などであろう。ここで考えるべきは、企業として、その周辺需要もビジネスとして美味しい、という点である。

個人の生活に入り込んでくればくるほど、セキュリティや個人情報保護に関するニーズも高まる。スマホなどの周辺機器などの「ハード」もニーズが出るだろうし、使い方を教えるなど「ソフト」も同様だ。

一方で、留意すべきは、自社をとりまく環境や、業界を破壊するであろう場合の、「衝撃」いいかに備えるべきか。

たとえば、家計の管理を自動でできるマネーフォワードなどの、クラウド家計簿が人気であるが、この考え方は、企業の経理処理にも応用されている。そうなると、会計事務処理代行業のビジネスに、大きなマイナスノイパクトが想定される。

【中小企業はフィンテックをどう活用すべきか?】

現金主義の日本では、スマートペイなどは、まだまだ普及していない、という数字もある。

しかし、20年前のクレジットカードのように、利便性が高いものが普及する可能性は高い。

したがって、先行者利益をとるのは、今の内がチャンスと言える。

Swishのような送金アプリの存在は、店舗を持って商売をしている企業にとっては、顧客の利便性をあげるのに、非常に便利だ。

セミナー主催者がペイパルの仕組みを使うように、手数料がかからず、手軽なので、日々の買い物や、神社での賽銭などに、実際に使われるようになってきている。

私がアメリカで講演をした時は、彼らが現金を持たないので、書籍販売やセミナー代も、タブレットなどでクレジットカードや、スマホ決済でできると高倍率や参加率もあがるのだろうな、と実感したものだった。

来るべき時代に、私たち中小企業は僕、どういうことに対処すべきか?

フィンテックのプロになる必要はない。マーケターの視点から考えると、顧客の利便性のために何ができるか、を常に考えていなければならない。

最先端を研究する必要はないが、情報には敏感になるべきだ。アンテナだけたてておいて、数ある中から最適なものを選ぶ。

顧客の利便性を高める先端手段の一つだ、くらいに捉えておき、必要な時にすぐ雨t帰るようにはしておくべきであろう。

注意点としては、「流行に左右されない」こと。

行き過ぎた利便性は、顧客との触れ合いを無くしてしまう。

駄菓子屋のおばちゃんが、「はい、お釣りを15万円」と言って渡してくれる、あの、事業主と顧客との関係性構築は、どんなビジネスにも必須であり、何にも代えがたい、独自性を出すことができ、ひいてはロイヤルティにつながるのだ。



■目次

… 1.特集「中小企業はフィンテックにどう備えるべきか?」

… 2.コラム「マーケターの発見力」

… 3.書評「ニュースのなぜ?は世界史に学べ」

… 4.ワンポイント時間術「15分の昼寝で成果を出す」

… 5.著書・イベントのお知らせ

… 6. 編集後記

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