女王様のご生還 VOL.73 中村うさぎ

「ナルシシズム」に関して、ここのところいろいろ考えている。

引き続き、このテーマにお付き合いいただきたい。

この問題は、私たちが死ぬまで格闘すべき重要なものだと思うからだ。



ナルシストは自分が愛されているか否かにしか興味がない、と、前回述べた。

要するに、自分にしか興味がないのだ。

だから、他人の立場に立って他人の視点で物事を見ることができない。

これは、重篤な「客観性の欠如」である。



もちろん「私」という主観の檻に閉じ込められている我々に、完全な客観性など持つことは不可能だ。

だが、幸い、我々には想像力がある。

他者の多様性を書物や映画から学び取り、それを基に他者の気持ちや思考を不完全ながらも推測することは可能だ。

だが、ナルシストには、こういった「他者の多様性」に対する理解や「他者の視点で世界を見る」という努力が欠けているので、「他者の目を通して自分を見る」という作業もできない。

よって、非常に美化された自己像が修正されることもないし、ひとりよがりな他者解釈を相手に押し付けることも多々ある。

もちろん、その「他者解釈」は常に間違っているので、彼ら彼女らは永遠に「他者」を知ることができない。

それどころか、永遠に「自分」を知ることもないのだ。

これは、生きていくうえで本当に重大な欠落である。



悪いことは連鎖するもので、この「客観性の欠如」は「他罰傾向」を生むことになる。

自分を正しく顧みることができないため、たとえ自分のせいで起きた不幸でも、誰かのせいだと考えてしまう。

ナルシストは自分を冷静に批判する目を持たないので、激しい自己嫌悪に苦しむことはあっても、それがまったく自省に繋がらない。

ただただ、感情的に自分を憎んだり呪ったりするだけだ。

自己批判と自己嫌悪はまったく違うものであるが、ナルシストにはその違いがわからないので、ただの自己嫌悪を自己批判と捉えて、「自分は自己批判のできる客観的な人間だからナルシストなんかじゃない」などと思いっきり勘違いしていることもある。

この続きを見るには

(452文字)

¥200(税込)

購入して続きを読む