BDアニメ 厳選!俺流アニメ 第7回『宇宙戦艦ヤマト2199』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

※2012年12月発売号の原稿です。当時公開の劇場映画レビューつきです。

【惹句】雄大なる宇宙の旅。あふれるロマンと濃厚なSFビジュアルが細密な映像で復活!

●SF的アレンジが大画面に映える高密度映像

 アニメ史上の記念碑的作品を、38年の時を経て再生させた『宇宙戦艦ヤマト2199』。リメイクの枠を超えた、最先端のアニメとして美麗なビジュアルが楽しめるタイトルだ。オリジナルの尊重と大きな飛躍の両立は可能か。過去の再現を超えた、未来への「継承」とは何か。

 そんな熱い想いを実感させるアレンジとビジュアル、ストーリー展開が満載である。特に艦船類などのメカやモニター類を中心にCGを大量導入し、ディテールに手描きを加えた細密な映像は、まさにBlu-ray時代になって良かったと思える高密度感である。

 本来はTV用作品であるが、劇場のイベント上映にも耐え得る濃密さが嬉しい。今回、第7話から第10話を収録した第3巻では、これまでの原典準拠の姿勢から、大きな第一歩を踏み出そうとしている。ヤマト乗員が故郷・地球への別れを告げる通信や、デスラー総統自身が余興にヤマト攻略の陣頭指揮をとりつつ、敵ガミラス側の国家としての状況を見せるというあたり、イベントの仕立てとしては大枠で同じなのだが、テイストはかなり違い始めている。

 特に新キャラクター多数を加えた「群像劇的構成」は、この巻からぐっと本格化して厚みを増す。敵味方ともに「人の集団」であって、性格や思想の差違が絶妙に響き合いながら、戦いに彩りを加えていく。アナライザーのメカとしての存在感を掘り下げた第9話は泣かせるし、ガミラス人が地球人と変わらない存在という第10話にも、驚くようなアレンジが加わっている。

 こうした変奏の妙味は、この先どのような物語と映像を見せてくれるのか。実に楽しみなシリーズなのだ。

●誰もが驚愕した完全新作

 エヴァ映画の新境地

 今月の必見映画は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』。『序』『破』に続く完全新作の第3部だが、具体的な情報は事前にまったく発表されていなかった。今なら秘密主義の理由も自明であろう。誰も予想できなかったはずの内容、設定と、新鮮なものに接触した驚きの体験は、かけがえのないものだからだ。内容が秘密なのに、11月17日に公開されると同時に記録的な興収で大ニュースとなったのだから、これはまさに「事件」である。

 本誌読者には、エヴァ初のスコープサイズを採用したパノラマ感あふれる鮮烈なビジュアル作品であることを、強烈にプッシュしておきたい。まさに必見だ!

【2012年11月28日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)