『ガンバの冒険』Blu-ray BOX推薦文

※2014年12月発売号「この冬のおすすめBD特集」用の原稿です。

●小さなネズミの大きな冒険!

 まとまった時間で一気に視聴すると、各話のつながりが見えてきて楽しみが何倍にもなるTVアニメがある。『ガンバの冒険』(75)は、まさにその典型だ。

 チーフディレクターは『あしたのジョー』で知られる出崎統監督。町ネズミのガンバが「海が見たい」という動機で旅立った先で新たな仲間たちと出会い、困ったネズミたちを解放するため、恐怖で支配する白イタチ、ノロイとの死闘に挑む。

 「しっぽを立てろ!」を合言葉に海に山に旅を続け、友を信じて前に進み続ける頑張り屋のガンバ。初出から約40年が経過しても、画面からほとばしる熱気とエネルギーは色あせるどころか、ますます輝きを増して見える。

 スピード感あふれる画面から伝わってくるのは、「小さいネズミたちだからこそ、世界の大きさが分かり、絶対的な強者とも戦いぬくことができる」というメッセージだ。これは年月を経たことでより重みを増して感じられる。

 苦難に何度もくじけそうになるガンバたち。仲間も最初から仲良しではないところがいい。意見がぶつかり、ケンカ別れをしたりするホンネの中から「真の友情」が結ばれるそのプロセスは、さまざまな人生経験の後だと、より深く胸に染みわたる。

 出崎統を中心に各スタッフが互いに触発し合って「小さきネズミの視点の画づくり」を徹底した点も、実に感動的である。アニメーター椛島義夫の軽快な動きと巧みな表情、芝山努のレイアウトによる誇張の効いた構図、そして色もフォルムも大胆にデフォルメされた小林七郎の美術と、全部が一体となって「アニメの世界」ならではのリアリティに結実し、冒険の味わいを何倍にも増幅する。

 この「ガンバたちから見た世界」に浸ること自体もまた、ひとつの「旅」なのである。小さな身体で巨体に挑むガンバたちの旅を一気に見れば、その不屈の姿から現実の苦難にも立ち向かえる勇気がもらえるはずだ。さあ、冒険に旅立とう!

【2014年11月27日脱稿】初出:「月刊HiVi(ハイヴィ)」(ステレオサウンド刊)