他人をバカにすることで生きる男たちーー①“サル”と罵倒しても結果を出す男の尻ードゥテルテ大統領

このコラムでは「あなたの真の価値を社会の窓(他者の目線)から見極める」目からウロコのコラムをお届けします。第一弾は「他人をバカにすることで生きる男たち」と題した大型連載です。今回のテーマは「“サル”と罵倒しても結果を出す男の尻ードゥテルテ大統領」。

何かと話題のドゥテルテ大統領ですが、彼の尻は「結果を出す尻」。実にイイ尻をしております。翻って、私たちの周りには思い通りの結果を出せずに、喘いでいるビジネスマンが増えてきました。“あなた”も、外から「正当に評価されない」不満と不安を感じているひとりではありませんか?

そこには「アナタに欠けていて、ドゥテルテ大統領にあるモノ」が存在する。「欠けているモノ」とは何か?

大手メーカー勤務の課長職に就く47歳の男性の語りから、その秘密を解き明かします。では、早速「47歳課長」の言い分をお聞きください。

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「自分で言うのもナンですけど、課長に昇進するまでは同期の中でも早かったんです。出世志向が特段強かったわけではありません。でも、昇進ってなんやかんやいってうれしい。出世願望の強さをけなす人いますけど、そういう人ほど出世したがってますよね(笑)。

ただ、この歳になると壁にぶつかるわけです。もうちょっと上まで行く予定だったんですけど、遂に下に越されちゃいました。仕方がないです。

しかも、上にきたのが生意気なヤツでして。MBAとか持ってるんですよ。ああいう意識高い系って、何かにつけて『時代が違う』だの『アメリカではこうする』だの、やたらいうでしょ。日本には日本のやり方があるんだから、やっぱそこんところ大切にしないと。競争に負けちゃうと思うんですよね。 

え? どこの大学のMBAかって? なんだっけなぁ……。聞いたことある大学だったんだけど、エッと……。アハハ、最近こんなのばっかです。アレ、コレ、ソレで会話成立ですよ。

同期ですか? 部長になったのは2人です。1人は『こいつ出世するな』って、最初のオリエンテーションのときに思いました。上手いんですよ、いろいろとね。わかりますよね? 上司の奥さんの誕生日ぜ〜んぶ覚えていて、花とか送っちゃうんですから。そりゃ、出世するでしょ。

もう1人は……なんでアイツ出世してんのかな。どちらかというと目立たないヤツなんですけどね。まぁ、上からしたら手堅い感じなんでしょうね。

私なんか好き勝手にやってきたんで、上司は使いづらかったでしょうね。でも社長賞、2回もらったしね。あの頃はちゃんと評価されてたなぁ〜。組織っていうのは、上にいけばいくほど正当には評価されませんよね。デキるヤツより、使い勝手のいいヤツが評価される。まぁ、そんなもんです。

会社もアホですね。若きゃいいと思ってるんですから。なぁんにもやらずにのさばってる輩は辞めさせても、40代の優秀な人は活かさなきゃ。人材を活かせない経営者が、日本には多すぎますよ。

早期退職ですか? 一時期は辞める人が多かったけど、最近は結構残ってますね。年々割増金も減額されるし、50過ぎの転職も起業も簡単じゃないでしょ?

僕ですか? 一応、いようと思えば65歳までいられるけど、あと数年で決めないとですね。残ってる先輩がどんどんさびれていくの見てると、ああはなりたくないなぁ、と。ちょっと前から準備はしてるんですよ。もともと先生になりたかった。なので人に教えるってのをやってみたいと思って、勉強してます。何をやっているかは内緒です(苦笑)。

自分の価値がいかほどなのか、それを見極めたいですね。長年サラリーマンやってるヤツなら、そこがいちばん不安なんじゃないかな。今の会社の社員じゃなくなった時、世間は今と同じように自分を見てくれるだろうか? ってね。そこがいちばん知りたいです」



こう語る男性は、大手企業に勤める47歳。誰もが知る有名大学出身です。10年前なら「もうちょっと上に行く予定」が叶っていたことでしょう。 

でも、今は無理。50歳を過ぎた“マンネンヒラ”が、半数を超える時代です。組織のスリム化に伴いヒエラルキー型組織の“イス”は確実に減り、マンネンヒラは、この20年間で8.9ポイント増加しました(厚労省調べ)。

私はこれまで、600名以上のビジネスマンのフィールド・インタビューをしてきました。大学院に在学している頃からやっているので、かれこれ10年以上になります。年齢は20代前半から90歳まで。企業も職業も役職も多種多様。特に40代、50代の方たちには、数多くご協力いただきました。もちろん今も続けています。目的は自分の研究活動やコラム、講演会などに「現場の目線」を生かすためです。

2009年頃からでしょうか。この男性のように「曖昧な不安」を訴える40代が増えてきました。自分の価値への曖昧な不安です。この年はリーマンショックの余波で企業から解雇される人が増え、前年の年末からは「年越し派遣村」が開設されました。

その後、企業では「希望退職」という名の絶望のリストラが始まり、「役職定年」という窓際族勧告も慣例化し、肩身の狭い思いをするミドルが社内に増殖しました。

そんな世のオジさんたちを震撼させたのが、2012年10月に報じられた記事。「ベテラン社員が若手の横で社内清掃」という、ショッキングな見出しの内容は、大手計測器メーカーのタニタの雇用延長の取り組みを報じたもの。「大手計測器メーカーのタニタの本社では、60歳を過ぎたベテラン社員が若手社員らのそばで社内を清掃している」との文言から始まっていました。

あのとき成立したのが、改正高年齢者雇用安定法です。年金受給開始年齢引き上げに伴い、60歳の定年後も希望者全員を65歳まで雇用することを企業に義務付けた法案です。

「ブイブイ言わせていた上司が、清掃会社で再雇用なんて……何だかなぁ」

「何やってもカネをもらえりゃいいんじゃないかとも思うけど、正直つらい」

「自分には耐えられないなぁ〜」

「だから、そうならなくて済むように、今から備えなきゃなんだよ」

etc.etc……。

そうです。「一応、いようと思えば65歳までいられる」企業は増えたものの、「ああはなりたくない」とやるせなくい気持ちになった人がたくさんいた。配属先もさることながら賃金も半分以下。ひどい企業では、たったの2割。だから余計に気になる。「オレの市場価値は、いかほどか?」と。

インタビューした人の中には、ベテランが長年培ってきたスキルを活かせるポジションを、企業が準備し「お給料はさがっちゃったけど、やりがいはある」と話してくれた人もいました。でも、それは極めてまれです。

だからみんな、ガンバルわけです。

自己啓発に勤しみ、リーダーシップ本や思考本を買い求め、日経ビジネスやら東洋経済やらダイヤモンドやらを、スマホで、パソコンで読みあさり。政治、経済、社会問題まで、ニュースに敏感に反応できるスキルを身につけ、自分の価値をあげるべく自己投資する。

本当にみなさん、よく勉強していらっしゃいます。

でも、でもです。そんな努力とは裏腹に、なぜか自分が思うほど周りから、評価されず腑に落ちない。「オレはそれなりにやってきた。結果だって残してきた」という自負があるだけに、翻弄される。

そこで今度は、それニーチェだ、それアドラーだと、哲学や心理学本にどっぷりとはまり人生の教訓を得る。 

「愛が恐れているのは、愛の破滅よりも、むしろ、愛の変化である」

「目的を忘れることは、愚かな人間にもっともありがちなことだ」

「悪とは何か?  弱さから生じるすべてのものだ」

「人間にとって必要なことはただひとつ、自分自身に満足するということである」

 by ニーチェ



「すべての悩みは対人関係の課題である。仙人のような世捨て人でさえも、実は他人の目を気にしているのだ」

「ほかの人の自分に対する評価は、その人の個人的な意見であり、自分の評価そのものには関係しない」

by アドラー

どれも素敵な言葉です。

自分より上をいく同期や同級生との関係がギクシャクし、いつ最後のセックスをしたのかも思い出せない微妙な夫婦関係に戸惑い、平均寿命まであと何十年もあるのに、退職金も年金も減らされ不安満載のミドル世代には、どれこれも光となる言葉です。

「日本には日本のやり方がある」ように自分には自分のやり方がある。

「自立できない人」はいらない。目的をもって、強く生きよう。 

「世間は今と同じように自分を見てくれるだろうか?」なんて気にしないで、嫌われる勇気を持とう。

そうです。「真実などない、あるのは解釈だけである」というニーチェの名言どおり、自分なりに解釈し勇気をもらうのです。

それはわかりますが、あなたは本当に“素敵な言葉どおり”に生きる自信がありますか?

本当は「課長に昇進するまでは同期の中でも早かった」んだから、アイツのように部長になりたかったんじゃないですか?こんなにがんばってるんだから、「正当に評価して」欲しいと思ってませんか?

「生意気な若造」に見下されたくない。負け組にはなりたくない。このままで終りたくない。そう。まだ終りたくないーー。そう思っていませんか?

だからこそ、「自分の価値はいかほどなのか?」が気になって仕方がない。だって、ホンネは嫌われたくないんです。人間の基本的欲求としての「承認欲求」がある限り、好かれたほうがいいにきまってるじゃないですか。

あなたに必要なのは、嫌われる勇気ではありません!評価され続けている人、勝ち続けている人、モテ続けている人、かっこ良く生き続けている人にあって、冒頭の47歳の男性に欠けているモノ。

それは「SOC=Sense Of Coherence」。そう「SOC」です。直訳すると、首尾一貫感覚。平たくいうと、人生のつじつま合わせが出来る力、です。

誰もが認める成功者、勝ち組、レジェンドと呼ばれる人たちは、例外なくSOCが高い。彼らの仕事満足感や人生満足感はとても高く、健康状態も良好で、いかなる困難も乗り越える強さを持っています。あなたに必要なのは、「SOC」の高さです。SOCがポイントなのです!

最近話題の人物といえば、フィリピンのドゥテルト大統領。氏のこれまでの実績や91%を誇る圧倒的な人気、そして、氏のさりげない振る舞いからは、SOCの高さを感じ取ることができます。

ドゥテルト氏はご存知のとおりダバオ市長を7期勤め、ダバオ市をフィリピン有数の危険な街から「東南アジア一治安の良い街」に導きました。第16代フィリピン大統領に就任してからは、メディアは氏の薬物犯罪への強硬なやり方ばかりをクローズアップしますが、「自首した者は療養プログラムを与える」という宣言もしていて、刑務所から溢れ出るほどの60万人もの犯罪者が自首しています。

外交面では「米国との関係から離脱する」と宣言して、国際社会を動揺させる一方、中国からはおよそ135億ドルに相当する経済協力と、異例の大盤振る舞いを獲得。訪日の際には、南シナ海問題について、「ときが来たときには日本側に立つ」と明言し、安倍総理もニコニコ顔。風見鶏と批判されかねない言動も、「したたか」「やり手」「上手い」と高評価です。

彼はミンダオ島にある日本人墓地を私費で修復したり、2013年10月にボホール島・セブ島の震災で私財を寄付したり、2013年11月に台風30号「ハイヤン」で被災したレイテ島にも真っ先に駆けつけたりしています。

一見乱暴者のようでありながら、結果を出している男ドゥテルテ大統領。彼は外からの評価を、気にもしていない感じがします。でも、彼の尻は実にイイ。尻は自分では見えませんが、フィリピンの国民や氏と直接関わった人には、氏が結果を出す理由がわかる。尻の良さこそが、SOC。そうです。SOCは周囲との関係性の中で発揮される力なのです。

え? まだ何が「SOC」かわからない?では、SOCが欠けている人の言動から、お話しましょうか。 

ネタを提供してくれるのは、“第2秘書室”のメンバーです。

私のインタビューに協力してくれた方の中には、人事部ダイバーシティー課ダイバーシティ推進室という部署に所属する女性が数名いらっしゃいました。私は彼女たちの部署を、別名「第2秘書室」と呼んでいます。女性たちはいずれも「女性活躍」を進めるために、男たちをよく見ています。そもそもそういった部署に招集がかかるのは、社内の隅々まで知り尽くしたお局さまや、上司に楯突くことを恐れないおてんば娘たち。彼女たちは実に小気味よく「男性陣」をキリまくります。

第2秘書室で語られた「SOCが欠けている人の言動」とは? 次回、お話しましょう。

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