炭水化物がカラダを老化させる? Part 4

※この記事は、『バーサーカーコラム』2014年5月7日からの抜粋です。

http://www.berserker.jp/column/show/68

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炭水化物を控えた食事をした場合、ケトン体が主なエネルギー源となる。その状態をケトーシスと呼ぶが、それは決して問題のある状態ではなく、むしろメリットのほうが多い。

まずはケトーシスについての良くある間違いを払拭しておこう。糖尿病などでインスリンが働いていない場合、身体は糖質を使うことができないため、このときもケトン体が主なエネルギー源となる。

インスリンは糖新生を抑制するが、インスリンが働いていない状態だと糖新生が活発に起こり、血糖値が高くなる。その上でケトン体も急増する。

血糖値が高くなり、尿に含まれる糖が多くなると、浸透圧を調整するために尿の水分量が増える。そして脱水が起こる。このような状態になると、体液をキープする機能が働かなくなり、体液が酸性に傾く。それをケトアシドーシスと呼び、食あたりや感染症などで脱水になったときにも起こりうる。

しかしインスリンが普通に働いている場合、糖質を制限してケトン体が増えても、アシドーシスにはならない。体液を正常にキープする働きがしっかり機能しているからだ。だから糖質を摂取していないイヌイットはケトーシスにはなるけれども、ケトアシドーシスにはならない。

さてケトン体とはアセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンのことを言うが、実はこのβヒドロキシ酪酸には寿命を延長させるかもしれない作用があるのである。



Suppression of Oxidative Stress by β-Hydroxybutyrate, an Endogenous Histone Deacetylase Inhibitor

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3735349/



DNAは先天的なもので、それ自体に変化は起こらない。しかしプロモータ領域に「メチル化」が起こると、遺伝子が転写できなくなってしまう。逆にDNAと結合しているタンパク質である「ヒストン」がアセチル化されると、遺伝子の転写が起こりやすくなる。このようにDNAに後天的な刺激が加わり、遺伝情報が変化することを、エピジェネティクスと呼ぶ。

上に紹介した論文では、ケトン体のβヒドロキシ酪酸がヒストン脱アセチル化酵素を阻害し、酸化ストレスを減らすということを示している。具体的にはFoxo3a遺伝子のヒストンアセチル化を促進し、MnSODやカタラーゼなどの生体内抗酸化酵素の発現を増やすことで、酸化ストレスを緩和するということだ。

またケトーシスの状態はコルチゾルが減少し、脳の働きも高まるとされている。ケトーシスは決して健康に悪いのではなく、むしろメリットのほうが多いという科学的事実が、徐々に医師の間にも受け入れられはじめているようである。