自分の成長機会をどうつくるか~午堂登紀雄の「フリーキャピタリスト入門」

いかに成長の機会をつくるか

「レバレッジ」という言葉をご存知の人は多いと思いますが、「てこ」の原理のことで、小さな力で大きなものを動かすというところから、様々な場面で使われるようになっています。

レバレッジはスピードであり、より大きな力を引き出せるパワー。自分一人の力だけではできることに限界がありますが、他の人のチカラを借りることで、より小さな労力でより大きくスピーディーに物事を成し遂げることができます。

代表的な例が会社で、創業者一人よりも、従業員を雇って人を増やした方が、売上や影響力は何倍にも大きくできる。一つ一つの仕事を誰でもできるように手順化、マニュアル化し、役割分担を決めていけば、自分が抜けても会社は回る。

だから意識したいのは「自分の仕事はどうすれば標準化・自動化できるか」「どのようにマニュアル化すれば他人に任せられるか」ということを考えながら仕事をすることです。

ワクワクする仕事しかしたくない。ルーチンワークを嫌い、そういう仕事はなるべくやりたくない。早く他人に投げてほかの仕事をしたい。仮に自分がやらざるを得ない場合でも、どうすればか省力化できるかを考える。という意識を持っておく。

普通の人は、自分で業務を抱え込んでしまいがちです。「これは自分がやらないといけない」「他人に頼ってはいけない」「自分がやったほうが早い」などと考える人も少なくありません。それではいつまで経っても「いつもの仕事」しかしないことになる。

限られた就業時間の中で戦略的に仕事を選んでいくには、いかにルーチンワークを排除(他人に任せる、システムに任せるなど)し、考える力が要求される仕事に挑戦することです。

また、普通の人は、組織の歯車になることを嫌がります。歯車が嫌なら独立するしかないわけですが、それができない人は不平不満を言いながら会社に行くことになります。それでは良い仕事にはならないでしょう。

そこで発想を変え、巨大な歯車になることを目指すのです。

そもそも大きな歯車は、回転の中心に配置されることが多いわけで、その組織やプロジェクトの中心人物になっているということ。また、歯車が大きければ、他の小さな歯車と組み合わさる余裕が生まれる。それはより多くの人と関わりつながっていくとも言えます。

「噛み合う」という言葉があるとおり、いろんな人とがっちり組み合えば、自分なしでは物事が進まなくなる。それはつまり、あなたがその組織のキーマンになるということに他なりません。

人と関わらずに組織の中では仕事ができない。しかし自部門だけでなく他部署の大勢の人とつながっていれば、部門間をまたぐ業務や、部門間の利害が対立する場面でも仕事がしやすくなる。それこそ上層部とつながっていれば、彼らが持つ権限を活用できる可能性が高まる。

しかし、小さな歯車では、多くの人と噛み合うスペースがない。自分より大きな歯車と関われば、彼らの動きに自分を合わせなければならない。スピードを変えたり、逆回転などはできない。それに、もしひとり歯車になれば、誰とも関わらないということであり、どこにも影響力がなく、まったく存在価値がないことになる。いわゆる空回りです。

人と関わるのは疲れるしいろいろストレスもあるけれども、自分の歯車を大きくしていくことは、それだけ社内での影響力が大きくなることを意味し、やがて「キミがそう言うなら」などと自分のペースや希望条件で仕事ができるようになるものです。

人間関係を「いつもの同僚」だけに限定せず、飲み会を「いつものメンツ」だけに限定せず、異動や転勤を嫌がったりせず、新しい人と出会うチャンスを増やしていきたいものです。

そうやって影響力を拡大していけば、自分の方から行かなくても、人やチャンスが向こうからやってくるようになります。

これは自分のサラリーマン時代も、そして起業したあとでも同じ実感を持っています。

しかしそんなとき、「それはそうかもしれないけれど、そうは言ってもねえ・・・」という思いを抱くかもしれません。

リクルートの創業者である江副浩正氏がかつて、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」と言ったように、自分の意志で自分を変えようとするより、機会を通じたほうが変えやすいと言えます。

たとえばダイエットしようとしたとき、意志に頼ると挫折しやすいが、刑務所に服役すれば自然に痩せられるというのは、堀江貴文氏が刑期を終えて出てきた姿が記憶に新しいでしょう。

実際、糖尿病患者だった人が犯罪を犯し、刑務所暮らしから出てきたら血糖値は健康な状態に戻っていたという医師の話を読んだことがあります。

もちろん刑務所の話は極端であり参考にならないかもしれませんが、これを私たちの生き方に当てはめると、「自分が成長するような機会を作り、そこに飛び込む」ということになります。

それは、今の自分の能力ではできるかどうかわからない難易度が高い仕事に取り組むことや、新しい挑戦をすることです。たとえば前述のセミナー開催などもそうですよね。

毎年富士山に登っていても、登山力は上がらない。世界の様々な山に登ってこそ、経験やノウハウが蓄積され、応用が利くようになる。同様に、ルーチンワークだけでは、いつもの日常、いつもの自分であり、変化も成長も期待できない。

そこで、新しいプロジェクトに手を挙げる、部署の移動を申し出る、あるいは転職することで、今まで自分がやってきた方法だけでは通用しない世界に飛び込めば、自分が変わらざるを得なくなります。

また、つねにより高い目標設定を自分に課すこと。それも、従来の延長線上では達成できないような目標です。

たとえば今までかけていた時間の10分の1で、この仕事を終わらせるにはどうしたらよいかと考えれば、やり方をガラリと変えなければならない。そこで脳が猛然と動き出し、ゼロベースでの発想も可能になる。

仕事だけでなくプライベートでも、たとえば今年中に結婚したいという目標を立てたらどうするか。とにかく出会いの回数を増やさなければならないから、ネット婚活サイトに登録し、毎月10人にアプローチしようとするかもしれない。そして好感を持たれるメール文章、メイク、ファッション、デートコースを研究するかもしれない。

しかし、そうやって挑戦し試行錯誤を続けることで、女子力(男子力)が上がっていく。すなわちそれは「成長」に他なりません。

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