レゴランドジャパンに見る価格設定の重要性=理央周

レゴランドジャパン ファミリー向け新価格設定

【レゴランドジャパンの価格変更は値下げなのか?】

私の地元名古屋に、4月1日にオープンした、レゴランドジャパン。東京にはディズニーリゾート、大阪にはUSJと、大型テーマパークと言えばこの2つだったところに、やっと名古屋にもできたと、とても喜ばしい。

年間200万人の来園者数を目指すとのこと、産経ニュースによると、愛知、岐阜、三重の近隣3県以外からの来場者は、全体の6割だったそうで、入場者数を増やすには、海外を含む他県からの集客が今後の鍵を握るので、この6割という数字がベンチマークになると言えそうだ。

そのレゴランドジャパンが、5月25日から、家族向けの入場料を最大25%割り引くチケット、「ファミリー1DAYパスポート」の販売を開始したとの報道があった。

多くのニュースソースでは「値下げ」、と報道されている。

確かに、ここ数週間レゴランドジャパンの、メディアでの露出も減った気がするし、レゴランドジャパンに隣接する商業施設の中にある、1店舗が撤退を表明、レゴランドジャパンの集客数が思ったより低いことが、その理由と報道されてもいる。

この「ファミリー1DAYパスポート」は、2種類あり、4人分チケットは通常、最大で2万4400円、入場日から7日以前に購入すると1万8300円、2~6日以前だと1万9600円に割引されるとのこと。3人分のチケットの方は、通常最大で1万9100円で、同じように、7日以前の購入で1万4700円、2~6日以前で1万5600円の価格になる。(レゴランドジャパンのホームページより)

つまり、値下げや値引きというよりも、「ファミリー向けチケットの“早割りサービス”を開始した」ということになる。

一見、同じことを言っているようだが、大きく異なる。

価格は、価値の格という文字で表されるように、顧客が価値に見合う対価を支払うものだ。それを、下げるということは、見た目の価値を下げる、と受け取られてしまうことになる。

レゴランドジャパンとしては、値引きする、または値下げした、と捉えられるべきではなく、明らかに子供連れのファミリー層を主要ターゲットにしているため、「ご家族向けのサービスの一環として、早割りサービスを開始しました」という方針を表現すべきであろう。

【価格設定の重要性】

「値決めは経営」という稲盛和夫氏の言葉にあるように、経営者は価格を設定する際に、多様なこと複雑にからみ合わせて考える。

以前このメルマガでも書いたが、USJにおいては、数学マーケティングの手法を導入しているし、顧客がどれだけ、価格の振れ幅に対して敏感に反応するかを調査する、PSM分析という手法もある。これらに、競合状況を鑑み、固定費と変動費、初期投資の減価償却や回収年数などを鑑みて決定する。

すなわちすべての経営資源をどのように活用し、収益を好転させるか、という経営の目的に、最も近いところにあるのが価格設定なのだ。

報道によると、

「2~12歳のお子様とそのご家族をメインターゲットとしているため、そうしたチケットがあった方がよいかどうか、以前から社内で検討しておりました。お客様からそうしたご要望もあったので、販売に至りました」(J-CASTニュースより)

とのことだが、その背景には、前述したプロセスがあったことを望みたい。

【中小企業が参考にすべきこと】

今後、レゴランドジャパンが目標西にしている、年間200万人を目指すには、何をすべきだろうか?通常、初年度は話題性があるので、来園者数もあるが、USJもそうだったらしいのだが、2年目からに来園者数が減ることが多いとのこと。

やはり、顧客がロイヤルティー持って、リピート来場してくれることが一番であろう。そのために、今回のファミリー早割り価格の設定は、一つの手法として、功を奏すればよい、と感じる。

しかし、お値打ちな価格だけでは、お値打ち価格が好きな顧客層が集まり、他に安い価格のテーマパークができれば、そちらに流れてしまう。

やはり、明確な事業コンセプトを打ち出すことが、まずは必須だ。

東京ディズニーリゾートは、ゴミ一つ落ちていなく、園内から外の建物は見えない、ミッキーは、私たちの心の中に1人しかいないという、「夢の世界」がコンセプトだし、USJは、映画を軸にした、「エンタテイメント」がコンセプトだ。

コンセプトが明確だと、顧客に自社が提供したい価値も伝わり、価格ではなくその価値が判断基準になる。

レゴランドジャパンのコンセプトは、やはり知育玩具で学びながら遊べることであろう。

私も息子や娘が小さい時に、レゴを使い「自分で工夫して」一から何かを組み立てることで、想像力と創造力の、両方が育まれると感じていた。

レゴランドジャパンも、既存のアトラクションで楽しむだけでなく、工夫する、作り出す楽しみを、家族で体験できることが、顧客価値であり、事業コンセプトだ。

コンセプトへの共感による、判断基準を明確にすることで、来園者数増を目指すべきであろう。

私の大好きな地元名古屋にできたレゴランドジャパン。さらなる飛躍をしてもらいたいと感じる。

■目次

… 1. 特集 「レゴランドジャパン ファミリー向け新価格設定」

… 2. コラム 「ロサンゼルス のイタリアンThe Kitchen Factory」

… 3. 書評  「一生モノの副業」

… 4. ワンポイント時間術「ーターの競争優位の戦略を自分に当てはめてみる」

… 5. 著書・イベントのお知らせ

… 6. 編集後記

2.コラム:「ロサンゼルス のイタリアンThe Kitchen Factory」

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