通貨価値を下げるFTPL・大学授業料の無償化・DeNA株等

■通貨価値を下げるFTPL・大学授業料の無償化・DeNA株等

トランプ政権の誕生直後に刊行した「長谷川慶太郎の大局を読む緊急版」の『大転換』(発行:李白社、発売:徳間書店)が絶好調の売れ行きです。すでに増刷は3刷となりました。『大転換』では大型減税、インフラ投資、金融規制改革、エネルギー規制改革などのトランプノミクスの中身を広く深く解説しています。トランプ政権の国際政治および国際経済に与える影響についても詳述しました。全国の大手書店の店頭に並んでいますので、ぜひご一読下さい。

●政府債務を軽減するインフレを財政政策で意図的に起こせるのか?

 日本政府の債務(借金)は2016年度末には866兆円にも達します。この巨額の債務に関連して日本の政治家が注目しているのが、アメリカ・プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授が唱えるFTPL(物価水準の財政理論)です。シムズ教授はノーベル経済学賞受賞者で最近来日もしています。FTPLの基本的な考え方は、

①財政が悪化している国の政府が財政支出を増やし、それでも増税を行わずに「財政再建を棚上げする」と宣言すれば、

②これによって企業や個人は将来の財政悪化を予測するため、

③通貨の価値が下がって、

④インフレが発生する、

というものです。

①を実行すると歳入不足に陥るので、普通であれば歳入不足を補うためには国債を発行することになるでしょう。しかしFTPLでは歳入不足を補うための国債発行は想定しておらず、といって国債発行に代わる具体策をシムズ教授が明言しているわけでもありません。

 いずれにせよFTPLによれば、インフレを起こすと政府の債務もそれだけ軽くなるということです。インフレによって例えば物価が2倍になると政府の実質債務は半分に減ります。つまり、日本政府の債務が866兆円だとしても、物価が2倍になればその実質債務は433兆円にまで軽減されるのです。

 また、日本では日銀による異次元金融緩和でも物価上昇率目標2%はまだ達成されていません。これについては、政策金利がほぼゼロになっているため、もはや金利を下げられず、その結果、物価を押し上げる効果がなくなっているからだとの指摘があります。この点でも日本の政治家の間では、日銀の金融政策ではなく政府による財政政策としてFTPLを実施してはどうかという意見が出てくるようになりました。

 シムズ教授も「日本政府が、政府債務の一部を増税ではなくインフレで帳消しにすると宣言すればいい。そのうえで、日銀ではなく政府のほうが2%の物価上昇率目標を掲げて、これを達成するまで消費税増税を延期すればいいのではないか」と発言しています。要するに、FTPLで毎年2%ずつ物価を上げて2%ずつ政府の債務を減らしていくべきだというのです。

◆インフレかデフレかを決める要素は戦争と平和以外にはありえない

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