勝つと負ける(その2) 『熱血!中村修二ゼミナール』夢のみつけ方(第9回)





勝つと負ける(その2)

さて、先週の宿題です。「勝つことによって自信を持つ」「勝つことによって強くなる、成長する」という考え方には限界があります。なぜだか分かりますか。

それは、人はいつまでも勝ち続けることはできないからです。どんなに連戦連勝をしていた人でも、いつかは負ける時が来ます。世界最高の記録を打ち立てた人でも、いつかその記録は塗り替えられるでしょう。その自分の記録を追い越された時、連勝を止められた時、自分が否定されたような気になります。

そういうハイレベルな話でなくても、「勝って強くなる」という論理にはそもそも原理的に無理があります。最終勝利者は一人だけ、残りは全て敗北者になってしまうという現実です。また、たとえ勝ち残ったとしても、次のステージでも勝ち続けられるかというと、多くの人はふるい落とされてしまいます。

県予選の1回戦から始まって甲子園で最後まで負けずにいられるのは、高校野球出場校4000校の中でたった1校だけです。その1校もたいてい翌年の大会では負けてしまいます。

東大合格を勝ちと言うなら、毎年3000人以上が勝者になりますが、トップ合格を勝者と言うなら1人以外はみんな敗者でしょう。

今、100mを9秒台で走ったら日本一、日本人で初めての快挙と絶賛されるでしょう。でも、世界大会では間違いなく予選で敗退。マラソンで日本一になってオリンピックに出場する選手も、その記録を出せる選手はケニア1国で何十人もいるのです。

私も青色LEDの開発競争で、輝度と寿命で世界一を記録しました。でも先例ができれば追いかけるのは楽です。5、6年も立たないうちに各社が実用レベルの高輝度青色LEDを開発するようになりました。

勝ち続けるためには、常に先を見ていなければなりません。誰もできない前人未到の世界に突入して行くのです。1993年に発表してからもう20年以上になります。その間も休みなく研究をし続け、変換効率と耐久性を高めるだけでなく、チップを正方形ではなく三角形にカットすることによるコスト削減、さらに青色ピーク強度を下げることによって眼に対する健康障害を防ぐなど、さまざまな面での開発改良に取り組んで来ました。

その結果、私の研究は青色LEDを捨てて紫色LEDに換え、さらには究極の光源と言われる半導体レーザーに発展しているので、生きている間は世界一を維持することができると思います。それでもいずれはほとんど差がないレベルまで追いつかれるかもしれません。全く太陽光に近い光がごく安価に手に入れられるようになって、「なんか21世紀の最初の頃は、熱が出るとか眼に悪いとかで、いろんな企業が開発競争に血道をあげていた時代があったそうな」などと昔話に語られる時代も来るのでしょう。

私の座右の銘は「盛者必衰」です。どんなに隆盛を誇っている企業も、強大な権力を握っている人もいつかは衰えて行く日が来ます。人も組織も国も永遠に勝ち続けることはないのです。

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