『崖の上のポニョ』論
※2008年の原稿です。題名:変わっていく現実と夢の混合比――スタジオジブリ第2の出発点『崖の上のポニョ』●現実と夢の境界に自覚的だった 宮崎駿監督作品 「子どもに夢を」という手垢のついた言葉がある……。 スタジオジブリと宮崎駿監督の最新作『崖の上のポニョ』について考えようとしたとき、まずこの言葉が脳裏に去来した。そもそも子どもとはいったい何歳までの児童を指しているのか、夢とは何のことか。解...
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※2008年の原稿です。題名:変わっていく現実と夢の混合比――スタジオジブリ第2の出発点『崖の上のポニョ』●現実と夢の境界に自覚的だった 宮崎駿監督作品 「子どもに夢を」という手垢のついた言葉がある……。 スタジオジブリと宮崎駿監督の最新作『崖の上のポニョ』について考えようとしたとき、まずこの言葉が脳裏に去来した。そもそも子どもとはいったい何歳までの児童を指しているのか、夢とは何のことか。解...
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今さら強調するようなことでもないが、自分が趣味的にも職業的にもアニメに深入りする契機になったのは、1974年の『宇宙戦艦ヤマト』からである。であれば「ヤマトの何がそんなに良かったのか?」という質問にも答えを用意しておきたい。だが、なかなかこれを明瞭に説明するのが難しい。 とは言うものの、ごく一断面であっても折りに触れて語っておいた方が良いかなと思うことも多くあるので、ここでは『宇宙戦艦ヤマ...
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題名:どこまでも人を信じる主人公に重なる監督の姿 主人公クオンの髪型を初めて見たときには、激しい衝撃を受けた。迫害される特殊能力者集団のリーダーならやはりこの髪型なんだと、微笑しつつ納得する。『超人ロック』や『地球へ…』など懐かしい作品を連想したわけだが、リスペクトとかお約束とか、そんな生やさしいものを超えた、必中の「覚悟」のような感覚も同時に伝わってきた。 キャラクターデザインは川元利浩だ...
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第2回 今よりももっと宇宙が身近だった――ガンダム放映のころ 『機動戦士ガンダム』の舞台といえば、宇宙植民地《スペースコロニー》。そして真空の宇宙空間は《そら》と呼ばれ、登場人物たちにとって自然な生活環境の一部になっている。そんな宇宙に対する自然さは、ガンダムシリーズ全般の魅力だ。 TVシリーズ第5話から6話にかけて、ホワイトベースは地上への降下を試み、宇宙と地球の境界を突破する「大気圏突入...
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題名:「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」円熟味を増したガンダムサーガ●ファーストガンダムのビジュアル中枢「安彦良和」 1979年にTV放映されたアニメ作品『機動戦士ガンダム』(原作・総監督:富野由悠季)が放った衝撃の大きさは、本書を手にとっている方にはいまさら多くを語る必要はないだろう。その後の20数年を、最初の遭遇に受けたインパクトを抱きながら過ごした観客たちと、その後連綿と生まれ...
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『バジリスク ~甲賀忍法帖~』は2005年に放送された全24話のテレビアニメーションである。アニメーション制作はGONZO。監督はこれが第1作目となる木崎文智、助監督は西本由紀夫、シリーズ構成はむとうやすゆき、キャラクターデザインと総作画監督は千葉道徳、美術監督は池田繁美という布陣で濃厚なビジュアル化が進められた。 本作にはふたつの原作が存在する。直接の原作は、せがわまさきによる同題の漫画...
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※2005年の原稿です。 映画『ローレライ』については、対談本「ローレライ、浮上」(講談社刊)で樋口真嗣監督と福井晴敏氏から濃密な話を聞いて、まとめさせていただいたという経緯がある。その上、編集部依頼で「月刊ガンダムエース」誌(角川書店)でも、自分の連載枠を2回分使って述べた。 ヒットもしたし、今の気持ちは「良かった良かった」である。なんだか他人の作品のような気がしなくなった部分がある。 た...
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題名:物言わぬロボットに託した再生の意志 「ロボット同士のボクシング」と親子の絆を通じ、栄光に背を向けていた男の再生を感動的に描いた作品だ。別れて暮らしていた息子とスクラップにされていたロボットATOM、この二者と出会うことで、元ボクサーは生きる意味と誇りを取り戻す。息子は血縁、ロボットはボクシングのスキルと、自分を継承した「分身」という構造が巧みだ。 最初はダメ男にしか思えない父親に接する...
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題名:青春の感情を結晶化した作品 何のために映像作品を観るのか、アニメを鑑賞するのか。 普通はそんな細かいことは考えなくてもいい。娯楽なのだから、小うるさい理屈は不要。セオリーに合致してるかどうか念頭に置きながら、プラスアルファの感動が得られるかという程度の判断で充分だ。情報過多の時代、受容を簡便化するために人は枠を作りあげる。ジャンルを規定し人物は「キャラ」として識別しやすく仕立てられ、ド...
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第4回 どうまとめた? 劇場版『機動戦士ガンダムⅠ』(その1) 劇場版1作目、映像上のメインタイトルには『Ⅰ』の表記はない。これは1作目には数字表記をしないのが映画界の慣習だからである(2作目がつくられない可能性もあるため)。このコラムでは便宜上、商品上の呼称にしたがって『ガンダムⅠ』と表記していこう。 『ガンダムⅠ』は、TVシリーズの第1話「ガンダム大地に立つ!」から第14話「時間よ、とま...
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