私が自信を持てるようになった瞬間―話せないなら書きましょう♪ Part2 『ハーバード留学記Vol.19』 山口真由

 前回の記事では、私の初めてのレポートについてテーマ選びまでを聞いていただいた。今回の記事では英作文の書き方について見ていきたい。

 重要なのは視点、構成、そして熱意の三つだろう。

まず、視点:これについては、アメリカ人の大好きな二項対立的な視点を取り入れること。アメリカ人がなぜ二項対立が好きかについてはvol.13以降、散々考えてきたのでご参照いただきたい。この二項対立の視点には物事を単純化しすぎるきらいはあるが、逆に、シンプルなものは頭に入りやすいのも事実。特に、アメリカ人が慣れ親しんだ明快なフレームワークは、彼らにも伝わりやすいだろう。二項対立的な視点は、絶対的にお薦めである。

 次に、構成:これはとにかく3つがキーワード。理由であれ、事例であれ、3つを並べて「理由1、理由2、理由3」、「事例1、事例2、事例3」とする。3枚くらいのペーパーならば3つが限度である。30ページの論文になったからと言って、9つの理由を単調に繰り返すのはよくない。それならば3つをまとめて1章、次の3つをまとめて2章としていくほうが構成としては頭に入りやすい。だいたい3つというのは、人が苦労なく覚えられる限度なのではないかと、私は思う。

 最後は、熱意。こういう根性系のことを書くと笑われるけど、意外と大事。人の才能なんてものに大差はないのだから、人を分けるのは意外とこういう湿っぽいところなのである。

 そして、最後に見てください!レポートの1ページ目にバーソレッテ教授が殴り書きした”Excellent”(アメリカ人は字が下手ですね)の文字。今見ても、私はちょこっと泣けてくる。これは、私がハーバードで初めてわずかに自信を得た瞬間だった。このほんのちょっとした成功体験が、私のハーバードでの1年を180度変えたのである。

1. 視点:二項対立

 視点、要するにテーマであるが、これは二項対立的な要素を取り入れると、レポートがぐっと分かりやすくなって締まる。

 前回、親のいない子に対する教育支援サービスについては、

a) 一人一人の子どもたちが持っているユニークな「ストーリー」を大事にすること

b) 一方で、子どもたちの集合体としての「データ」が力を持つこと

a) かけがえのない一人一人の子どもたちに着目して密度の高いサービスを提供していくアプローチと、

b) 逆に、一人の子どもたちはいわゆる数値と考えて規模を拡大していくアプローチ

という、一見、相容れない二つのアプローチが必要とされていると、書いた。

 前者に「個人型サービスアプローチ」、後者に「機関型サービスアプローチ」という名前を付けて、具体的に定義してみることにした。

個人型サービスアプローチ:サービスを受ける個人に着目したアプローチ。親のいない個々の子どもたちが、その子どもを抱えるフォスター・ファミリーが、ケース・ワーカーが、それぞれ何を必要としているのかを重視。

機関型サービスアプローチ:サービスを提供する機関に着目したアプローチ。公共機関と連携して効率化することで、提供できるサービスの量を拡大することを重視。

 親のいない子どもたちに対する教育支援サービスというのは、個人型サービスアプローチを基本とすべきだろう。

 なぜならば、親のいない子どもたちに、教育において親に代わる存在を与えることが、すべての教育支援の最終ゴールだからである。親であるならば、この世で唯一無二の「我が子」の個性に着目して、そのユニークな個性にとって最適の教育を学校と協力して作り出したいと願うはずだろう。

 

 しかし、それは非現実的である。親と同じだけの手間暇を一人一人の子どもたちにかけていられるほど、NPOのリソースは豊かではない。教育支援サービスを必要とする全国の子どもたちに、どれだけ効率的にサービスを提供できるか。そう考えると、機関型サービスアプローチも必要となってくる。

 では、この個人型サービスアプローチと機関型サービスアプローチの組合せをどうするべきか。それが、私のレポートのテーマとなった。

 

2. 構成:合言葉は「3つ」

レポートの視点が定まったら、その視点に沿ってすべての資料を読み直してみよう。そうすると、その回の講義の講演者であったエミリー・カレン氏の取組みにも、ジャッセ・ハーネル氏の取組みにも、個人型サービスアプローチを基本としつつ、それを拡大していこうという機関型サービスアプローチの組合せ戦略が読み取れてきた。

 資料を読んでいて「あーここ、使える!」と思った箇所にはアンダーラインを引く。そして手書きで書きだしていく。

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