ハーバード・ローのクラスで養子を学ぶ―二項対立というアメリカの考え方 『ハーバード留学記Vol.13』 山口真由





 これからは、ハーバードの授業について書いていきたいと思う。私にとっての最初の授業はエリザベス・バーソレッテ教授のファミリー・ロー。はじめはやや難しく思えた授業が、私はそのうち大好きになった。そして私は、この授業を通してアメリカの「二項対立」的な考え方を学んだのだ。

 私の先生であるエリザベス・バーソレッテは、子どもの権利を重視して、生みの親が機能しない場合には、新しい親(=養親)が生みの親に代わるべきと考えていた。当然、この考え方は批判される。親の権利を重視する立場の学者からは、血統でつながった家族は尊いもので、家族をバラバラにするなんてとんでもないと批判されていた。

 ここで私が言いたいのはどちらの主張が正しいかではなくて、こういう相容れない二つの主張を対立させて、右か左かを突き付けるような考え方、つまり「二項対立」的な考え方を、アメリカは好むということだ。共和党と民主党の候補者が激しく争う大統領選を見ていれば分かるでしょ?

 そして、この二項対立的なフレームワークは分かりやすい反面、デメリットもある。

a) 両者の違いを強調するあまり、対立を煽るような構造であること

b) 物事を単純化しすぎて、両者の間に存在するダイバーシティを見落としがちなこと

 具体的に見ていこう。

1. Nobody’s Children―誰の子でもない子

 アメリカの社会が二項対立とすると、エリザベス・バーソレッテはその左の端っこだった。彼女の家族観はある意味極端で、それが彼女自身の家族形成にも大きく影響を与えていた。エリザベス・バーソレッテは子どもの権利の確立に生涯をかけた人であり、ライフワークとして養子に取り組んだ人であり、自らも二人の子供を養子に迎えたシングルマザーだった。

 そして、養子の取り組みを通して、彼女は、家族とは「血統」ではなく「機能」であると考えるようになったのだった。

記事の新規購入は2023/03をもって終了しました