竹内義和の「猫の目コラム(CATS EYE ′S COLUMN)」  第二回 トランプ大統領、そのゲームの行方

第二回 トランプ大統領、そのゲームの行方

トランプが第45代のアメリカ大統領に就任しました。生粋、混じりっけなしの泡沫候補が天下を取ったわけですね。日本で言えば、マック赤坂が総理大臣になったみたいなものでしょうか。このとんでもな結果にアメリカのみならず、世界中が唖然としています。

しかし!

僕たち関西人はあまり驚いてないんですよ。マックじゃなくノック。そう、あの横山ノックさんを知事にしてる実績がありますからね。僕たち関西人は、

「ノックはな、ええことせんかもしらんが、悪いこともせんやろ」

という考え方なんです。つまり、御輿に乗る人は何もしなくていい、悪いことさえしなければってことですね。関西人は、いわゆる一般常識とは違うベクトルで、人とか政治とかを判断するもんなんですよ。

まあそれにしてもあのトランプが大統領になったわけでしょ。なんだかんだ言いながら、興味はありますよね。ヒラリーが人気無さすぎということもありましたよ。だけど、よりによってアメリカ国民が支持したのがトランプですからね。無責任に言えばこんな面白いことはないし、映画的に見たらこんな痛快なことはないでしょう。これがアメリカの民主主義の「今」なのか、それとも「なれの果て」なのか、僕には判断しかねますがね。先日、「バイキング」という番組で、トランプを特集していました。ゲストのドクターコパが風水でトランプを云々してたけど、これが噴飯ものでしてね。彼いわく、「トランプさんが羨ましい」と。何故かと言うと、「あんな綺麗な奥さんや娘さんに囲まれて」ってことらしい。なんやそれ!って、思わず突っ込みましたけれども。同じくゲストのひろみが「彼は大統領じゃなく、王様になったつもりじゃないか」と言ってました。この意見には頷くとこありましたね。含蓄のある言葉ですよ。さすが、芸能界の王様に冷や飯を食わされたことだけのことはあると思ったわけです。

でね、トランプの下品さをとやかく言う人は沢山いますでしょ。大統領らしくない、と。言われても仕方ないとこはありますし、確かに大統領の器じゃないと僕も思います。言うならば、どこにでもいる調子乗りのおっさんですよ。ほら、正月に田舎に帰ったら、あんなおっさんいたでしょ。朝から酒を呑んでるみたいな。昼間には出来上がってしまっててね。顔を真っ赤にしながら親戚の前でああだこうだと「おだ」をあげるわけですよ。身内の悪口を散々言ったあと、ピント外れな天下国家論を宣ったりもするしね。もう聞いてるだけで鬱陶しいし大人は眉をひそめるのですが、変に子供連中には受けがいいんです。お年玉もたんまりあげてるし、感情も露にするから、子供には分かりやすいのでしょうね。機嫌がいいと調子に乗る、嫌なことがあると怒る、無視されると拗ねる、持ち上げられると喜ぶ、嬉しくなるとお金をばらまく。考え方と行動の目線が子供と一緒なんですよ。トランプのスピーチは、小学生でもわかる言葉で喋ってると言われています。だから、アメリカの子供には人気があるらしいんです。でもそれって、親戚の叔父さんとしてはよろしいのでしょうが、大統領としてはどんなものでしょうか?そうそう、近所の食堂とかにもいますよね、トランプもどきのおっさんが。食堂のテレビの野球中継を見ながら、

「ピッチャー交代や。あいつは肩が弱いから3回が限度や言うとるやろ。もっと腕を振らんかい!バッター、ビビっとるから内角突いて当てにいけや!」

とか言ってるおっさん。そんなおっさんをプロの球団が監督にしたようなものでしょ、今回のトランプって。食堂のおっさんもトランプも、良いも悪いも自分が見たまま思ったままに後先を考えず発言する人なんです。食堂のおっさんは、なんの力もないから大丈夫なんですが、トランプはアメリカの大統領なんですよ。世界一の大国の最高権力者なんですよ。トランプの一言で世界中が右往左往してしまうんです。困ったもんですよね。正直、トランプを支持している人は、どんな人たちなのでしょうか?多分、世の中に一泡吹かせたいと思っている人だと僕は思うのです。現状に不満のある人たち。何かとんでもないことをして欲しいと願っている人たち。そんな人たちが、トランプだったら、

「何かとんでもないことをしてくれそう」

その期待だけで、1票投じたと僕は思っています。そこまで追い詰められた人間がアメリカには何人もいたわけです。その結果、トランプが大統領になってしまった。

「しまった!」

と思ってる人もいるでしょう。

「なんでやねん」

と頭を抱えてる人もいるかもしれません。

就任直後の支持率が45%という事実がそれを物語っていると思います。ただ、トランプが大統領になることによって、よくなることもありそうです。磐石だった金持ち優先の世界秩序が変化していくのかもしれません。その可能性は決して0ではないのですね。少なくとも、今までアメリカを、ひいては世界を動かしていたごく1部の白人エリートたちが慌てているのだけは確かでしょう。ひょっとしたらグローバリズムの美名のもと、人の労働力を搾取し続けてきた富裕層がそれなりの報いを受ける時代が来るのかもしれません。どちらにしろ、これからトランプがどんな政策を打ち出してくるのか、そこがポイントですよね。ここしばらくは、アメリカ国民も僕たちも彼のゲームの行方を静かに見守るしかありません。

果たして、トランプがきるカードは、エースなのか、それともジョーカーなのか……?

神のみぞ知る、ですね。