”気づきの多くはすでに気づいている

「自身が”ひょっとしたら・・”と思っていたことが明確になった」

これは先日私が登壇したインバスケット研修終了後の受講者の声です。

私は「インバスケット」といわれるツールを用いて、企業の幹部や管理職に研修を行っています。一時期は年間の約半分を講師として登壇していましたが、最近は、社内で講師が成長し、年間50日ほどになりました。

インバスケット研修終了直後の受講者はどのような様子なのか?

決して笑顔ではありません。多くの受講者は「打ちのめされている」状態になっています。

なぜなら、自分自身ができると思っていた部分が、実際はできていないことに気づくからです。

インバスケット研修に参加される受講者の多くは、企業のいわゆるエリートと呼ばれる方たちですが、彼らは自分自身たちが、いかんなく能力を発揮し、修正する余地などないと考えています。特に上位職になると、仕事の進め方に対して指導されるケースも少なくなります。経営者になればなおさらです。

私自身も管理者の時代にインバスケットに初めて挑戦したのですが、受験する前の「根拠のない自信」はあっけなく打ちのめされました。あいまいな判断、表面的な問題解決、配慮のない指示の出し方、まさに目を覆いたくなる状況でした。

本当に自分に気づいたのです。

しかし、私はあの時にインバスケットで本当に自分がわかったよかったと考えています。なぜなら改善の方向性が見いだせたからです。

私を含めて多くの場合、自分がすでにできている得意分野の研修を受けたがる傾向があります。これはバイアスです。自分の得意な分野は、その方の基準が高いためにさらに高めたくなります。ですが、本当に学ばなければならないことは別にあるのです。それにインバスケットは気づかせてくれました。

この大事な気づきですが、実は、まったく知らなかったことに気づくということはほとんどありません。多くの気づきはすでに受講者の中にあり、それが明確になっただけです。

「自身が”ひょっとしたら・・”と思っていたことが明確になった」冒頭の受講者の声です。つまり「自分自身の判断は正しいのか?」ですとか「部下指導は本当にこれでいいのか?」などと考えていたことが、インバスケットを通じて、そしてグループワークや講師からのフィードバックなどから明確になっただけなのです。

気づきの多くはすでに気づいているのです。しかし、根拠のない自信や先送り、楽観視することですべて気づいていないことになっているのです。

このような状態からは成長は望めません。早く気づきを受け入れて、先に進みたいものですね。