なぜまだもめる加計学園問題

モリ・カケ問題が治まらない。これまで「記憶がない」と加計学園関係者らとの面会を認めていなかった柳瀬唯夫・元首相秘書官(56)が参考人招致で一転して官邸で3回にわたり面会したことを認め謝罪した。しかし、加計の「人と会ったことを総理に報告したことはない」と答えるなど、一貫して総理を巻き込まないよう“忖度”している様子が浮かび上がり、かえって「不自然な答弁をしている」と野党から猛反発された。

また愛媛県の中村時広知事も“柳瀬氏がこれまで首相案件と語ったとする文書の記述は担当職員が一言一句漏らさず報告したいという気持ちで、ありのまま書いているのに、どうして全て正直に認めないのかわからない。県の信頼を損ねるような発言があったのは非常に残念”と反発した。

また、安倍首相は「柳瀬氏から加計学園の報告を聞いた覚えはない」と柳瀬氏の発言をかばった。ただ、柳瀬氏が首相の友人の加計氏と3回も会って獣医学部創設の話を聞いていたのに首相に報告しないのは不自然と思われても当然とみられる。

また、柳瀬氏は安倍氏のゴルフに同行し安倍氏と加計理事長が長年の友人であることも認識していただけに加計氏との会談内容を伝えなかったことはかえって疑問に思われよう。一方、首相側も加計学園問題を重要案件と受け止め、早急に検討するとしていながら一度も柳瀬氏に問い質さなかったのは不思議と思われても仕方がないとの印象を与えたといえる。

いずれの場合も、互いに問題をよく知りすぎているため、いちいち言われなくても理解できていたとも取れるが、逆に特別の便宜を図ったとみられたくないため、首相の側も聞かなかったし、柳瀬氏も報告せず忖度しながら事を進めていたとも取れる。

しかし、獣医学部認可が加計学園だけに行なわれた経緯を考えると、安倍首相と役所との間に何らかの“示し合わせ”があったと取られてしまうわけだ。

加計学園が獣医学部の申請を行なうことは、何らやましいことではなく堂々とやっていればよいことだし、審査にあたって安倍首相や内閣府が手続きにのっとり、公開して粛々と正しくやっていれば何ら問題はないことなのである。にも拘らず、ここまで事がこじれる背景には余計な忖度が働いたり、答弁に不自然さやあいまいさがあったためだろう。もし不正や忖度などがなかったのなら、加計学園理事長や審査した人々などを国会に呼んですっきりさせた方が早道だし、よいのではないか。

いつまでも加計問題を引きずっていると内閣支持率は上がらないし、「やはり裏に何か問題があったのか」と疑われよう。それにしても最近の官僚は政治や首相を慮っているのか率直にモノを語らず官界全体の信用を落としているのではないか。

【Japan In-depth 2018年5月19日】

※画像は岡山理科大学獣医学部サイトキャプチャー

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 機械やコンピュータがいくら進歩しても出来ない職人技。材料を見て、旋回させ、適切な位置にブレ止めをかけてからやらないと出来ない、長い経験と多くの失敗の積み重ねがあって初めてできる旋盤工の職人技についてお伺いいたしました。

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