"独裁"の流行で乱れる世界

 最近、世界ではやり出しているもの──といえば”独裁的政治”ではなかろうか。アメリカのトランプ政権、ロシアのプーチン政権に中国の習近平政治。北朝鮮の金正恩、トルコのエルドアン政治、フィリピンのドゥテルテ大統領、中央アジアのカザフスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、ウズベキスタンなども1991年の独立以来、ほぼ一貫して同一人物か、その後継者が大統領になっている。

 そして我が日本の安倍首相も”一強他弱”ぶりがますます目立ち、独裁的傾向を強めているとみる国民が増えているのではないか。独裁といっても中世のように強権をふるって抑えつけるような幼稚な独裁者はいない。取り巻きの人物たちに権力者の考えをそれとなく伝え忖度させたり、世の中の雰囲気を作り出したりするケースが多いのだ。露骨に権力を使ってねじ伏せたり、捕えたりするようなことは少ない。逆に甘いワナを仕掛けて味方にひき入れることだってあるぐらいだ。

 トランプ大統領は去年の大統領選挙とその後のロシア工作を巡る疑惑について、コミー前FBI(連邦捜査局)長官を更迭した。その前段として、「FBI長官に留まりたいなら忠誠が必要だ。私が捜査対象ではなかった事実を公表して欲しい」などの対話を9回も行なったという。このためコミー氏は捜査中止の指示と受け止め、証拠として詳細な対談記録を作り、後にその記録を公表した。しかしトランプ大統領はコミー記録は「全くのウソ」だと反発している。

 安倍首相は戦後3位となる長期政権で衆参でも与党が多数を占めているため、いまや与野党の中から安倍首相を直接批判する人が少なくなっている。また首相は批判されても直接答えることがなく、つい最近まで〝加計問題〟などの再調査を拒否してきた。しかしそうした姿勢に世論が厳しくなり、支持率などが大幅に落ち込んできたため、やっと再調査に応ずることとなったのだ。

 トランプ大統領に対しては、独立した特別検察官が調査することになり、安倍政権の加計学園問題に対しても再調査や前川前文科省次官を証人喚問に呼ぶ動き(※)もあった。しかしこれらが単なるガス抜きのためのショーとして行なうのだとわかったら、政権はまた痛い目に遭おう。権力は怖い。政権に不利な証言をした途端、前川前次官が出会い系バーに通っていたことを報道され、人格攻撃にまで及んだ。さすがにこのやり方には世論も反発し安倍政権への支持率が急落した。理不尽な攻撃や懐柔には、黙って服従することなくオープンにして反撃することも必要だし効果があることも知るべきだろう。

【財界 2017年7月18日号 451回】

画像:wikimedia commons 中央アジアの地図

(※)参院文教科学、内閣両委員会は10日、学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐり合同で閉会中審査を行った。衆院に続いて前川喜平前文部科学事務次官が参考人として出席している。

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