円高に負けた…スズキの所得隠しの罪は軽い 『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』

「スズキの課税漏れ」「確定拠出年金」「徳川家康とお金」

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台風大雨などの災害が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?

今回は、「スズキの課税漏れ」「確定拠出年金はやっぱりお得」「徳川家康とお金」です。

まずは「スズキの課税漏れ」から

9月13日の読売新聞に次のような記事が掲載されました。

スズキ、所得隠し3億円…申告漏れ総額12億円

大手自動車メーカーのスズキ(浜松市)が名古屋国税局の税務調査を受け、2015年3月期までの2年間で約3億円の所得隠しを指摘されていたことがわかった。

経理ミスなどを合わせた申告漏れの総額は約12億円に上り、重加算税を含め約4億5000万円を追徴されたという。同社は既に修正申告し、全額納付したとしている。

関係者によると、同社は余ったレース用オートバイの部品の仕入れ費用を経費に計上し、利益を圧縮。税務処理上、余った部品は在庫として管理し、使用するまでは経費計上できないが、同社は未使用の部品も使ったことにする「在庫除外」と呼ばれる方法で、3億円の所得を隠していた。

そのほか、外部委託した開発費についても税務上、開発終了まで経費として処理できないのに、費用の一部を経費に計上するなどし、計約9億円分の申告漏れを指摘された。

解説

日本の大手自動車メーカーの一つ、スズキの課税漏れ事案です。

この事案を一言で言うと、「利益の先送り」です

課税漏れの内容を見てみますと、「在庫除外」やそれに類するものです。普通、仕入れした材料や部品というのは、製品化して出荷したときに経費として計上します。まだ製品化されていなかったり、製品としては売れていない場合は、経費には落とせず、在庫に計上しなければならないのです。しかし、スズキは、製品化される前の部品を経費として計上してしまったということです。

つまりは、本当は、翌年や翌々年の経費になのに、今年の経費に入れてしまったということです。

これはどういうことかというと、「利益の先送り」なのです。

本当は今年は儲かっているはずなのに、例年や再来年の経費までを無理やり計上して、利益を減らしているわけです。

スズキのこの課税漏れは、それほど悪質なものではないのです。

収入を隠したり、架空の経費をでっちあげたりというものではありません。来期に計上すべき経費を、今期に計上していたということだけなのです。

スズキはなぜそういうことをしたのでしょうか?

2015年度決算というのは、スズキは過去最高収益と上げています。しかし、この最高収益の最大の要因は「円安」です。アベノミクスにより、円安誘導により、輸出企業は軒並み業績を上げました。

が、当の輸出企業たちも、「この好業績が本物ではない」ということに気付いていたのでしょう。円安の影響で儲かっているけれど、これがいつまでも続くものではない、と。

だから、今年度の利益の一部を圧縮し、来期や再来期に先送りにしたい、という気持ちがあったのではないでしょうか?



●確定拠出年金は絶対にお得!

前号に続いて、確定拠出年金のことをお話ししたいと思います。

前号では、確定拠出年金は非常に得です、ということをご紹介しました。

が、「確定拠出年金が節税になる」と言われても、一般の方には、今一つピンときませんよね?

なので、今号では、確定拠出年金がどのくらい得になるのか、具体的に他の金融商品と比べてみたいと思います。

お金を貯める際に、一番、手っ取り早く、安全な金融商品となると定期預金ですよね?元本割れする心配もほとんどないし、普通の預金よりは利子が高くなっています。

だから、とりあえず貯金するときには定期預金にしている人も多いのではないでしょうか?

この定期預金と、確定拠出年金を比べてみたいと思います。

あまり気づいていないかもしれませんが、この定期預金には、二度、税金がかかっています……。

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