NYSE同時上場で気になる韓国の影! LINE出澤社長 上場当日に直撃!【日経CNBC】

ゲスト:出澤剛(LINE社長)

無料対話アプリ大手のLINEが15日、東証1部に株式を上場した。今年最大の新規上場になる見通しで、ニューヨーク証券取引所(NYSE)との同時上場など話題も豊富だ。上場当日に出澤剛社長をスタジオに招き、今後の世界戦略を様々な角度から聞く。(放映日:2016年7月15日)



八木ひとみ:ここからは、今日東証一部に新規上場した、LINEの出澤社長にお話を伺います。出澤さん、よろしくお願いいたします。

出澤剛:よろしくお願いします。

八木:さて、まずは新規上場、おめでとうございます。

出澤:ありがとうございます。

八木:LINEの値動きですけれども、買い気配でスタートしまして、初値が公開価格を48%上回る、4900円ということになりました。初値ベースでの時価総額1兆円を超えて、順調な出だしということですけれども、まずは出澤社長に、上場したご感想から伺いたいと思います。

出澤:非常にいいかたちでスタートをきることができたというふうに思っていまして、非常に身の引き締まる思いというか、これから皆様の期待に応えて、さらにサービスを成長させていこうという気合というか、気持ちでいます。

八木:今日はLINEの新規上場、世界戦略についてお話を伺っていくということですが。

大石信行(日経CNBCシニアコメンテーター):まず、最初の質問として、上場について。その狙いなんですが、最初に東証に上場を申請した2年前というのは、SNSバブルとも言われる中で、もうちょっとその市場環境としては、LINEにとってはいい環境だったんじゃないかなと。その時じゃなくて、あえて今。そしてまた日米同時上場その狙いというのは、どういうところにあるんですか?

出澤:まずタイミングに関して言いますと、やはり環境よりも我々自身の考え方というか、準備が一番大事だというふうに思っておりまして。準備で言いますと、2年前は我々自身もどういうかたちで成長していくのか、あるいはどういった収益化ができるのかっていうのを、まだ確信が持てていない状況だったというふうに思います。それが今になりまして、かなり世界戦略も明確になっていますし、収益化に関してもステップを踏んで結果を出してきて、更に新しい成長に対しても自信を持てる状況になったと。もうひとつ言うと、組織の部分でもしっかりと固まってきたということで、今のタイミングで新しい株主の皆様をお迎えするのは、丁度いいタイミングだろうと。我々としては今がベストタイミングだと。

大石:また、日本だけじゃなくてアメリカでも、というのは何故ですか?

出澤:まず、我々は最初から世界のユーザーに使っていただきたいという思いでLINEのサービスを始めております。そういう意味では、これからも世界に挑戦していくんだという、強い意思表明でもあります。実際にIPOによって世界でのプレゼンスが上がることが期待できますし、あるいは様々の情報ですとか、チャンスに接する機会も多くなるということで、そういったことが日米両方での上場と。

大石:市場の見方としては、親会社である韓国のネイバーの支配権を強くしたいと。東証で上場すれば、そのうちの35%はマーケットに出さなきゃいけないけれども、アメリカと同時に出せばその比率は少なくて済む、というような見方もあるんですが、そのあたりはどうなんですか?

出澤:そこはもう、全く違いまして。先程も申し上げた通り、我々としては世界に打って出ていくと。その中でニューヨーク・東証の両方に上場することが非常に有効であるという、事業戦略上の判断になります。

大石:これからの成長の鍵を握る海外戦略なんですけれども、海外のライバル勢というところで、「WhatsApp」を傘下に持つFacebookとか、中国の「テンセント」「WeChat」、こういったところっていうのは、強力なライバルとしてあるわけなんですよね。こういうところと互してやっていくって、それで成長を狙っていくっていうのは、なかなか厳しいのではないかな、という見方もあるんですが。社長の考える成長、海外でどうやっていくのかっていうところを、ぜひ詳しく教えていただけますか?

出澤:1つは今のこの比較に関してなんですけれども、メッセンジャーの特徴として、ネットワーク外部性ネットワークエフェクトというものがあります。それはメッセンジャーを選ぶ時に、友達がたくさんいるサービスを必然的に選ぶということがありますので。例えば検索であれば、一番便利なものを世界中の人が使うっていうのはやりやすいんですけれども、こういったコミュニケーションのサービスだと、人間関係というものが一番の肝になっています。そういう意味では他のサービスが、我々がトップシェアをとっている国をひっくり返しにくいと。人間関係自身、LINE上の友達関係自身を最初から作り直すということは、非常に参入障壁が高いというところがあります。

更に我々はその上でポータルサービス、スマートポータルと我々は呼んでいるんですけれども、様々なO2O系のサービスコンテンツ系のサービス、両方やっておりますので、そういったユーザーさんの日常の生活に、どんどん繋がりが強くなっている、というのが今のLINEの状況です。そういったところが、こういった海外勢に比べても、非常に優位性があるというところだと思います。

崔真淑(日経CNBCコメンテーター):人間関係がやはり、結びついているところだと参入障壁が高いということなんですけれども。戦略としてアジア、台湾、タイ、インドネシアを重点市場とされていますが、中国ってすごくパイが大きいじゃないですか。かつテンセントとカカオがかなりタッグを組んでいるので、中国だけではなくて、アジアの影響力というものが私はすごく心配というか、気になるところなんです。この動きについてはどう見ていらっしゃいますか?

出澤:我々は今、アジアの4カ国にフォーカスをしている状況です。日本とタイと台湾に関しては、圧倒的なトップシェアをとっていまして、日本の皆様が感じているものと同じくらいの、ユーザーさんとの密着度という形になります。その意味で言うと、その3カ国は自動的にどんどんユーザーに入ってきていただいている状況なので、競合他社の脅威というものは全く感じていない状況です。唯一、インドネシアに関してはまだ2位という状況なので、トップを目指してWhatsAppだったりとか、あるいはインドネシアのトップはBBMというブラックベリーがやっているサービスなんですけれども、そこと今はしのぎを削っている状況です。ただ、インドネシアの伸び率というものは、非常に高いものがあるので、そこでトップシェアを獲っていこうというのが我々の展開です。

崔:そうすると、重点市場においてはテンセントやカカオとかの競合というものは、それほど無いんじゃないかということなんですけれど。ただ気になるのは、これからサービスを更に拡大しようと思った時に、セキュリティ面ですごく気になるニュースなんかも、今までにあったわけなんですが、このあたりはどう強化していこうと見ていらっしゃるんですか?

出澤セキュリティに関しては、我々は非常に当初から強化をしておりまして。内部のセキュリティのエンジニアも、日本企業の中ではトップクラスの信用とレベルを揃えておりますし、あるいはSOC2やSOC3といった一番厳しい認証の機関も、3年連続で取っているというところがあります。一時はアカウントの乗っ取りみたいな話もあったかと思いますけれども……。

:そうですよね。

出澤:今はもうほとんど聞かれなくなったかと思います。それは我々が日々、改善に改善を重ねておりまして、そういったことに対して柔軟にスピードも早く対応しているというところですので。そこは非常に、一番経営として力を入れている部分です。

大石:世界戦略をプランニングしていくというところで、ちょっと我々がわかりにくいなと思っているのが、司令塔がどこなのかというところで。LINEの場合は、親会社が韓国のネイバーになりますと。こちらに簡単な組織図があるですけれども、一方その韓国にはLINEプラスという会社がありますよね。こちらは海外戦略をたてるところなのかなと。実際に日本にLINEがあって、LINEプラスとの関係とか、役割ってどうなっているんでしょうか?

出澤:会社で見ますとLINEプラスは、LINEの100%子会社になっていまして、機能としては一部開発も持っていますし、あとは海外展開も、主務はこのLINEプラスという会社でやっています。

大石:なるほど。じゃあ、今日のニューヨークにいらっしゃったのはLINEプラスの……?

出澤:シンという、グローバルオフィサーが行ってました。あとは舛田という、全体の戦略担当責任者も行っていたと。

大石:そこは分けて考えていくと。

出澤:そうですね。なので、会社の箱で考えるよりも、経営陣の役割分担で考えていただいたほうが、わかりやすいかなと思うんですが。私が社長で経営全般そしてBtoBのビジネスをしていまして、シンがグローバルオフィサーですので、海外展開とプロダクト全般をしています。舛田事業と戦略というような役割になっています。

大石:これからのLINEということで、今日の朝刊に大きな広告を出しているんですけれども、その中にはこれからも前例のないことに挑戦していくと。挑戦をやってきたからこそ今のLINEがある、というようなお話があるんですけれど。社長が考える10年後、そしてどんな挑戦をこれからやっていきたいのか、というところを……。

出澤:大きく分けて3つあると思います。先程申し上げたインドネシアでもトップシェアを取る、ということは非常に大きなことなので、まずはそれが1つ目です。もう1つやっていることが、スマートポータルということをやっています。LINEのメッセンジャーの画面からあらゆることに繋がる、あらゆる利便性を高めていくということをやっておりますので、LINEがあればインターネット上のことはなんでも完結してしまうような世界観というものを、作っていきたいというふうに思っています。そしてもう1つ、収益の部分はしっかりと、これから着実に積み上げていこうと考えています。

大石ストックオプションのことについて、お伺いしたいんですけれども。結構ストックオプションというものは、全体の株式の中で10%くらいを占めると。それなりにウエイトがあるということで。こういったところが、マーケットに出てくることで希薄化されて、それがリスク要因になるんじゃないか、というような声もあるんですけれど、その辺はどうなんでしょう?

出澤:ここに関しては、当然ながらロックアップはかかっておりますし、それ以前にこのメンバーに関しては、皆LINEの成長にコミットしているメンバーでございますので、そこはご心配いただかなくても大丈夫だと思います。

大石意外と低いんですね、出澤さんのポジションっていうのは。

出澤:そうですかね。ただ、ここで申し上げたいのはやはり、インターネットのサービスは0を1にするのが非常に大変なんですね。なので、このシンという人間は日本へ7年前にきて、LINEの開発に関して非常に貢献した人間で、サービス自体を誰が作ったかということをいうと、このシンとシンのチームが作ったということですので。それはインターネットの業界において、0を1にした人間というのが一番価値がある、ということのは当然の結果かなと思います。

八木:もっともっとたくさんお話しをお伺いしたいんですが、こちらにてお時間となりました。今日ここまで、東証一部に新規上場しました、LINEの出澤剛社長にお越しいただきました。お忙しい中、ありがとうございました。

出澤:ありがとうございました。



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